主婦のお祭りに潜入!
女性特有の病気に関する医療セミナーやネイルサロンのビューティーブースなど、バラエティに富んだ催し物で沸き返った1日でしたが、なかでも注目を集めたのは著名人によるトークショー。夫婦問題研究家の岡野あつこ先生と断捨離提唱者のやましたひでこ先生が、不満や問題を抱えがちな夫婦関係のしなやかな乗り越え方について語った「夫婦の断捨離」など、次々と繰り出される金言に熱心に耳を傾ける来場者の姿が数多く見受けられました。
夫婦のあり方あれこれ
「家事や育児をちょっと手伝っただけで、夫はもう満足顔。私も働いているのに…褒めるのも疲れた」「精神的に子供。私はあなたのママじゃなーい」…etc. 程度や種類に差はあれど、女性側の不満としてよくこんなことを耳にします。トークショーの盛況ぶりを見るにつけ、パートナーとの折り合いのつけ方に苦心している人がいかに多いか、ちょっと垣間見た気分…。旦那様を自分好みにうまーく操縦するのが賢い妻と言いますが、みんながみんなそんなに器用なわけじゃありませんよね。
さてここで、最近出会った1冊の本に出てくる、浮世離れした夫婦のお話。
職なし、金なし、さらに女癖悪し。スペックは最悪でどこか憎めない愛嬌だけが取り柄の夫と、地味にのんびり能天気に生きる妻。夫は下手に取り繕いつつもたいして悪びれもせず小さな浮気を繰り返し、一方の妻はどこまで分かっているのか、家事に仕事に毎日マイペース。普通に考えたら幸せとは程遠い結婚生活のはずですが、2人の暮らしに流れるゆるい空気は平和そのもので、何もかもが欠けているのに不思議と充足している感もあり。夫婦の相性ってこういうことなのかなあと思える1冊です。
お互いの間に確固たる愛情があるわけでもないような序盤の結婚生活から、だんだん妻の存在が無くてはならないものになっていくラストにかけては、あんなにしょうもなかった夫が可愛く見えてきて、鈍感で不器用にしか思えなかった妻の生き方がすがすがしく感じられてくるから不思議。
本のタイトルは「長い道」。
作者は「夕凪の街、桜の国」で一躍名を馳せた、こうの史代です。
10年ものあいだ読み継がれている小さな漫画本ですが、結婚生活の長い道の途上で少し戸惑っている方は、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
【ライター 鈴木紘子】