錦町公園脇のビルの2階。小さな小さな和菓子屋さんがオープンしたのは今年11月のこと。入ってすぐのカウンターには、四季折々の想いを込めた月替わりの生菓子3種と、和風パウンドケーキやこしあんガトーショコラなど個性的な焼き菓子7種が並んでいます。
開店してまだ1ヵ月と少しですが、お昼を過ぎると生菓子が品切れてしまう日もしばしば。ひとつひとつ心を込めて手づくりされた優しい味わいと見た目の愛らしさに、小学校に通う女の子から妙齢のマダムまでありとあらゆる女子の心をわしづかみにしている「まめいち」の和菓子。3種の生菓子にはそれぞれ小さなストーリーが秘められているそうで、ご自分のことを「少し妄想系かも…」とおっしゃる店主・和菓子職人の幾世橋陽子さんにお会いしてきました。
設計は友人でもある「さくま建築設計事務所」に依頼。不思議と長居してしまう空間です。
店主の幾世橋陽子さん。京都のブランド「SOU・SOU」の和服がお似合い。
幾世橋さんがこの道を志したのは高校時代。ふと見た日本伝統文化のTV番組がきっかけで、私も和菓子職人になってみたい!と思ったそう。思い立ったら即行動、京都の老舗「老松」に熱き思いをしたためた手紙を送り、面接のチャンスを得て見事採用。ちなみに明治の創業以来数々の銘菓を生み出している老松を選んだ理由は、京都のガイドブックを眺めていて一番美味しそうなお菓子だったから。まっすぐな人柄を表すようなシンプルなオチが素敵です。
5年の修業を通して老松で和菓子のいろはを学び、帰仙。カフェ巡りという共通の趣味を持つ友人とカフェ「Cafe DAYS」を勾当台にオープンし、和菓子と洋菓子をひとつのお皿にというコンセプトが人気を呼びました。その後和菓子の道一本でやっていくことを決め、市内のお店へ商品を卸しつつ会場を借りて和菓子イベントを開催したりと多忙な日々を送るなか、「まめいち」を開くに至ったそうです。
焼き菓子は常時7種類ほど。フルーツがたっぷり入った「カラフル落雁」や、無花果(いちじく)・くるみ・きなこを練り込んだ「美人さんのおやつ」などユニークなお菓子ばかり。
そんな幾世橋さんがつくる和菓子は、とってもドリーミー。たとえば12月の生菓子のひとつ(生菓子3種は月替わりで新作にチェンジします)「snowy world」は、まだ誰の足跡もついていない真っ白な銀世界がイメージです。雪の結晶に見立て銀箔を散らしたシックな外見と裏腹に、中身は北海道小豆とスイートチョコレートを使った甘いこしあん。
「口の中に入れるとふわっと溶けていくチョコレートの甘さ。新しい世界に一歩踏み出す時に、その人の背中をそっと押してあげるような、そんなほんのりした優しさを感じてもらえればなあと思いながらつくりました」
右が「snowy world」(¥300)。光のページェントをイメージした左の「December dream」(¥250)は、柚子入り白あんを求肥のお餅でくるみました。柚子の酸味が口の中で広がる様は、さながら点灯式の趣き。
幾世橋さんのこだわりは、使用する“あん”の種類にまで。クリスマスケーキのように(ロウソクまで付いています!)ブルーベリーやクコの実、雑穀、かぼちゃの種をデコレーションした「silentnight」は、上品でさらっとした丹波大納言のつぶあん入りこしあんを使い、全体の調和を図っています。ちなみに伊達政宗公の正室・愛姫をテーマにした先月の生菓子は、心の強い人というイメージからコクのあるつぶあんを選びました。
誰かにプレゼントしたくなる可愛さ! 「silentnight」(¥350・キャンドル付き¥400)
「和菓子の魅力は、季節感を自由自在に表現できるところ。芽吹きの季節である春はカラフルに、涼しさが恋しくなる夏場は透明感を…といったように、いろいろ想像を膨らませながら色味や食材の組み合わせを考えている時間がいちばん好きです。老松の社長が“お菓子を通してお客様と会話する”ということをよく口にしていたのですが、私も誰かに手紙を書くような気持ちで毎日楽しくお菓子づくりをしています」
1.¥1,000以上お買い上げの方には、京都一保道のお抹茶をサービス。
2.棚に飾られた昔の和菓子用の型。
“おやつのおとも”見つけました
ニカラグア、グアテマラ、ペルー、ネパール…etc. 世界中から選んだ無農薬、無化学肥料栽培、フェアトレードのコーヒー豆を焙煎している「芦田珈琲」。お店を構えていないためなかなか入手が難しい芦田珈琲さんが、まめいち用に特別ブレンド。日本茶もいいけど、コーヒーと一緒に頬張る和菓子も美味しいね。1袋(100g・¥550)
和菓子 まめいち
仙台市青葉区本町2丁目19-9 クリスタルパレス本町ビル2F
022-302-4720
10:00~18:00
水曜定休
【ライター 鈴木紘子】【撮影 門山夏子】