街の小さなギャラリー「gallery swallow」が、仙台で活躍する作家さんの作品をご紹介していきます。
Vol.4の今回は、“金属料理人”という肩書を持ち、国内外で数々の賞を受賞している増田周一さんの作品をピックアップ。増田さんの頭の中で生まれた壮大な物語を感じさせる作品に、うっかり引き込まれてみてください。
物語のワンシーンが作品に!
作品になるまでに時間がかかるには理由があります。例えば「スズラン」という作品は、豆の工場で働いている子たちが歩く道端のスズランが、夜も働く子たちのために道を照らしているという設定ですが、ここで問題になってくるのが発光の問題。この原画ができた当時は、一番小さい電球でも豆電球が限界。電池ボックスも必要になるので作品と一体型にはできない…。当時は技術的に実現不可能な作品でした。それがしばらくして登場したLEDライトのおかげで、作品として完成したのです。
「スズラン」
そしてこの作品、ライトをつけると急にドラマティックなシーンに見えてきます。つまづいて運んでいた豆をこぼしてしまった子が、スズランのランプの灯りに照らされて、「あ!しまった!」となっているところ。「バーン!」と効果音が入りそうな感じです。でも不思議。この作品には「顔」がないのに、表情や感情が伝わるのです。その秘密は、豆を運んでいる子の足の角度や向きにありました。内股の足は女の子っぽく、上向きの足は張り切っている感じに、なんとなく表情や感情が読み取れませんか?
「スズラン」
「ビーンズファクトリー」
ところで増田さんの作品、一体どうやって作られているものなのか…。まずは純銅に亜鉛と錫を入れて真鍮を作るところからスタート。そして作りたい造形物をロウで作り、そこから鋳造するための型を制作。できた型に金属を流し込む精密鋳造という技法で作られているのだとか。これで各パーツを作り、くっつけていくことで様々な作品が生まれます。
作品は、独創性あふれる指輪
かいつまんでご紹介すると、デザインの専門大学を卒業する頃、作品が売れたり賞を取ったりしてお金ができたので、就職せず、いろいろな職人さんを紹介してもらいながら各地を転々とします。そこで経験したのが、焼き物、畳制作、紅芋掘り、仏像修復、アンティーク家具やジュエリーのお直し、ジュエリー制作など。金属だけにとどまらない様々な経験が、独特の世界観を生み出しているのかもしれません。
「雑技団」
単純に「かっこいい」「すごい」それでいい。
とにかく全てにおいて遊び心あふれる増田さん。コーヒー豆のアクセサリーを作るためにコロンビアの豆を買ってきて、一番コロンビアっぽい豆を選ぶオーディションをするところから始めてみたり…。さらにブラジルでも同じようにオーディションをして、それをミックスして「ブレンド」としてみたり…。話を聞いていると、いい意味でのくだらなさ具合に、不覚にもワクワクしてしまいます。
このワクワク感を、ぜひ作品を通して感じてください。作品は木枠から指輪が取り出されても作品として成立するように、小さな文字でストーリーが描かれていたり、設計図のような絵が描かれていたりするので、それを見るのもまた一つの楽しみ方。何も考えず「かっこいい!」「すごい!」「面白い!」と、純粋に作品を楽しむことをおすすめします。
他、作品紹介
「ホヤぼーやの真鍮ストラップ」
<プロフィール>
増田周一(金属料理人)
http://www.kazaribito.com//
イベント告知
増田周一さんの個展が開催されます!
物語のワンシーンを再現した作品が並ぶ、増田さんの個展「story’s」が開催されます。どんな作品が登場するのか、お楽しみに。
個展「story’s #08」
日時/11月23日(水)~29日(火)
11:00~19:00 ※最終日は17:00まで
会場/ギャラリーdot
仙台市青葉区一番町1-4-26 S・A RUMINAビル1F
gallery swallow
問 nasukawa@uracata.com
F https://www.facebook.com/galleryswallow/
I https://www.instagram.com/gallery_swallow/
※オープン情報、イベント情報、作家プロフィール等はこちらからご確認ください。
https://goo.gl/maps/c2bApemjMxA2
※駐車場はありません。近隣のコインパーキングをご利用ください。
仙台アート散歩では、毎回1人の作家さんの作品を詳しくご紹介していきます。
次号は毎日の生活をちょっとハッピーにする紙雑貨を制作している、ハッピー紙雑貨作家・SatoPoscaさんの作品を公開予定です。
※このページの情報は2016年11月4日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】