今観たい映画といえば、『君の名は。』。老若男女を問わず多くの人が連日劇場につめかけ、8月26日に公開されてから9月22日までに、興行収入が100億円を突破! 劇場動員数は774万人。映画動員ランキングでは4週連続1位を獲得し、大ヒット記録を更新中です。日本のアニメ映画で興行収入100億円を超えたのは、宮崎駿監督の作品以外では初という快挙。日本中…いえ、世界中が注目し、すでに全世界で85の国と地域での上映が決定!
そんな日本の新名作映画『君の名は。』の監督・新海誠さんと、主人公の瀧(たき)の声を演じた神木隆之介さんにお会いしました! おふたりが作品に懸ける想いを語ってくださった必読のインタビューをお届けします。『君の名は。』がますます観たくなる、もう一度観たくなる!
熱烈ファンの神木隆之介が語る“about新海誠監督”
神木さんは新海監督の大ファンとのこと! 新海監督の作品に出演できて、いかがでしたか?
神木:うれしいです! …信じられない。初めて「声を聞かせてほしい」と言われてお会いしたときは、すごく緊張しました。『言の葉の庭』から次回作を楽しみにしていたので、まさか自分がその次回作に携わることができるとは思いませんでした。急にグイッと引っ張られたような、一瞬では把握できない気持ちでした。新海監督の作品で新海監督が書かれた台詞を言えるのが、すごく幸せでした!
憧れの新海監督とお話してみたかったことはありますか?
神木:いっぱいあります! お会いして聞きたいことや言いたいことがたくさんあったので、全部聞ける!と思って、うれしかったです。たとえば、『秒速5センチメートル』のラストでこんなシーンがありましたが、あれはどうやって作られたんですか?とか。
新海:克明に覚えていらっしゃって、本当に好きなんだ!って。最初は気を遣って言ってくださっているのだと思い、“さすが優れた役者さんだな”と思っていたんですが、気遣いじゃないというのがわかり(笑)、うれしかったです。
神木さんから見て、新海監督はどんな方ですか?
神木:物事や世の中を素敵に転換できる方。これまでの作品を観ても、“素敵だな”と思える着眼点を持っていらっしゃる方だと思います。ただ、明るい方というのは意外でした。『秒速5センチメートル』の印象があったので、いろいろと抱えているのではないかと勝手に思っていました。
新海:ははははは! そんなことはないですよ。
神木:はい。実際にお会いしたら大丈夫でした(笑)。
相手を囲んでいる風景や環境によって、相手を知っていく物語
絵の美しさに終始魅了されました! 絵についてこだわったことは?
新海:アニメーションって、まずはキャラクターのイメージが強いと思うんですけど、僕はその人物を囲んでいる風景や環境も含めての情景が好き。だから、いちばん好きな絵のモチーフは、広い場所があって、遠くに後ろ姿で立っている誰か、っていう絵なんです。その人は何を考えているんだろうか?とか、その風景とその人の関わりはなんなんだろうか?って。書き手が風景そのものに明快に意味を込めることができるのが絵の力だと思うんですよね。今回の作品はまだ出会えていないふたりが出会う話。相手のことは直接知らないけれど、入れ替わることで相手を囲んでいる風景や環境によって相手を知っていく話なので、さらに絵がキレイである必要があったんです。
安藤雅司さんや田中将賀さんたちと一緒にお仕事をされてみて、どうでしたか?
新海:僕らにとっては伝説級のアニメーターである安藤雅司さんを筆頭に、凄腕アニメーターの方々に集まっていただきました。皆さんの仕事ぶりを目の当たりにして、背中から何かを突きつけられる衝撃。安藤さんはあれだけの技術があるにも関わらず、一枚の絵を描くのに何枚も何枚もラフを重ねていました。まるで修行僧のように、朝から晩までほとんど席も立たずに黙々と作業されていて。一日が終わる頃にはゴミ箱にガサッと絵が捨ててあるんですよ。アニメーション映画を作るってこういうことなのかと、安藤さんの背中を通じて突きつけられました。
新海監督の作品は、実写に一番近いアニメーション
「瀧」と、「三葉と入れ変わったときの瀧」を演じ分けるにあたって、それぞれ心がけていたポイントはありますか?
神木:瀧を演じるときは、ちょっと声がかすれていくような喋り方や、面倒臭そうに話す感じだったり、男子高校生ならではの抜け感を意識しました。三葉と入れ替わっているときは、瀧の声がちょっと高くなっていて女の子のようになるのですが、それがわざとらしくならないように。そして、あくまでも声帯は瀧であることを意識しました。男の子の声帯だから喉仏がちょっと消えかかるくらいの声かな、と。上白石萌音さんが演じる三葉は絶対かわいいだろうなと思っていたので、その話し方や音程を想像しながら演技しました。
いろんな役柄を演じられている神木さんですが、役者として生身でカメラの前に立つときと、アニメーションの人物を演じるときの違いは?
神木:実写の時は画面に自分が映っているので、自分が発する声が表情に出るし、話すタイミングや間を自由にできる。だけどアニメーションは、決められた間と決められた表情が先にあって、しかも声だけでそのテンションを表現しなくてはいけない。ノイズが出てしまうので動けないですし。圧倒的に違うなと感じます。毎回難しいなとも思います。でも、新海監督の作品は実写に一番近いアニメーションだと僕はずっと思っていて。今回はアニメーションをやらせていただくという反面、実写という気分もありました。
役作りに関して、新海監督からお話されたことはありますか?
神木:ビデオコンテをいただいて、それを観ながら練習をしました。仮で全部のキャラクターの声を新海監督が話しているんです。それぞれ話し方や声のトーンが違っていて。瀧って、三葉って、こういう話し方なんだなっていうのがスッと入ってきて、役作りを助けていただきました。練習どころではなく観入ってしまい、ビデオコンテを観るたびに感動していました。上白石さんとも話していたのですが、新海監督の声はすごくいい声だなと思いました。聞いていて落ち着く声なんです。
新海:おっさんがひとりで喋っていて、よく恥ずかしげもなくやったなぁと思うのですが(笑)。ビデオコンテは全部感情を込めて言いましたし、キャラクター性もそこに込めたつもりです。何度も見て役立てていただき、何百倍にも広げてもらいました。だから、役作りに関しては特には話したりしていないんですよね。上白石さんは神木さんにならなくちゃいけなかったから、神木さんが一番男らしい芝居をしている作品を見て研究した、と言っていましたね。
神木:「何が一番男らしい作品ですか?」と聞かれました。2日考えて、『11人もいる!』と答えました。
新海:そんなふうにみんなが個人個人で役作りしてくれていたので、僕はあまり苦労しなかったです。
気持ちよく前を向いて進む映画にしたかった
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登場キャラクターの中で、神木さんが自分にいちばん近いと思う人物は?
神木:好きな人たちと話しているときは三葉のテンションなのですが、普段は瀧です。三葉のように明るく色づいた性格のときもありますし、でもどちらかというと、瀧のようにモノトーンなときが多いです。7:3で瀧:三葉です。新海:両方混じっている。体現していますね。「おばあちゃん」って言われたらどうしよう、と思いましたが(笑)。
異性と入れ替わるとしたら、どんな女性と入れ替わりたいですか?
新海:上白石さんにはちょっと興味がありますね。入れ替わってみたいかもしれない(笑)。今大学生で、「大学が楽しい」と言っていたので。神木:楽しそうですよね! 僕は大学に行っていないので、大学生活は楽しいだろうなと妄想が膨らみます。学生なら、クラスの中心にいるような女子になりたいです。
新海:支配して、すべての男子を惚れさせて(笑)。
最後に、映画の見どころを教えてください!
新海:思春期で疾走感のある、未来を強く信じられる物語にしたいと思って描いた物語です。と同時に、2011年の震災以降、いろんなことが僕たちの中で変わってしまったと思うんですよね。大事な人や感情、場所がなくなってしまうときに、“せめてこうであったらよかったのに”という後悔、願いや祈りを含めて、物語でどうポジティブに語ることができるだろうか、と考えて描いた作品でもあります。気持ちよく前を向いて走る映画にしたかったし、背中を押す映画にしたかった。後悔とか願いとか祈りとか、美しいものを結晶化した作品にもしたい、という気持ちで作りました。ぜひ多くの方に観に来ていただいて、前に進む大きな力を少しだけでも持ち帰っていただければ幸せに思います。神木:本当に素敵な作品です。背景も心情も美しく描かれていて、音楽はRADWIMPSで。関わったたくさんの方々やいろいろな要素が奇跡のバランスで、みんなが奇跡を起こした作品だと思います。観終わった後に映画館を出たら、目から見るものだったり耳から入る音だったり、そういうものが素敵に見える映画になっています。ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。
ストーリーもビジュアルも、新海監督の描く世界は今まで見たことがないほど美しくて、でもリアリティがあって。アニメーションの概念を覆されました。男らしいのにユニセックスな魅力もある神木さんは、まさに瀧役にピッタリで、繊細な声の演技にドキドキしちゃいます♡ インタビュー中、新海作品への熱い思いを興奮気味に語ってくださった神木さんの姿もおちゃめでしたが。
『君の名は。』
原作・脚本・監督 新海誠
作画監督 安藤雅司
キャラクターデザイン 田中将賀
音楽 RADWIMPS
配給 東宝
映画公式サイト http://www.kiminona.com/
TOHOシネマズ仙台、MOVIX仙台、MOVIX利府、109シネマズ富谷、チネ・ラヴィータ、イオンシネマ石巻、イオンシネマ名取、シネマ・リオーネ古川にて、大ヒット上映中!
コピーライト (C)2016「君の名は。」製作委員会
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。「来世は東京のイケメン男子にしてくださ———い!!!」。そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。一方、東京で暮らす男子高校生の瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。「私/俺たち、入れ替わってる!?」。入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気づいた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く」。辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す。
【ライター 池田直美】