いよいよやってきた秋の紅葉シーズン。紅葉狩りに人気のスポットといえば鳴子温泉郷が思い浮かびますが、その一角をなす川渡温泉にかわいいもの好きの心をくすぐる小さなカフェがオープンしたのは今年6月のこと。
山が色づく直前のある日、さっそくおじゃましてまいりました。何やら静かに主張してくる入口の引き戸に出迎えられて、ごめんくださーい。
ふと視線を感じて頭上に目をやると…いらっしゃいますね。
砂糖入れの中に、またひとり。
少しふくよかなこちらの方は、一輪挿しとして華やかに装いつつ。
古鏡の前で真剣におめかしをしている者も。
壁時計に至っては12人の軍団が…!
そう、ここはこけしづくしのカフェ。木の香りに包まれたシンプルな店内の至るところに、たくさんのこけしたちが潜んでいます。その数はなんと、およそ100体を越えるとか(驚)。
オーナーは木工作家のだんなさまと川渡出身の奥さまの加賀さんご夫妻。もとは加賀さんが手掛けるこけし雑貨の販売所として考えていたお店でしたが、いろいろな人が集まれる場にもできたらと思うようになり、“こけし雑貨、たまにコーヒー”として、カフェを兼ねる今の形に至ったそう。「準喫茶」というあまり聞き慣れないネーミングは、そんなプロセスから来ているんですね。
内装から椅子からテーブルから、約10カ月かけて2人で手作りしたお店は、木のあたたかみと人の手のぬくもりにあふれたやさしい場所。この近くで切り出してきた川渡の木を天井の梁に使い、他の建材も天然の杉の木を使用しています。テーブルにはヒノキやカエデを用い、ひとつひとつ丁寧に磨き上げました。
それにしても何故、こけし?
奥さまの故郷に古くから伝わる工芸品ということで、なんとなく興味を持ったのがきっかけだそうですが、いつのまにかその素朴な魅力に魅せられていき…。
気が付けば、ちゃぶ台の脚に登場するまでに(笑)。頭上の重みを悟らせない、穏やかな微笑みに癒されます。
このようにただのオブジェを越えていろいろなものに七変化できる、そんな軽やかなところがこけしの面白さだと話す加賀さん。カウンターに目をやると、なるほど。コーヒーミルの取っ手からライトの紐の先端から、確かにすごい汎用性! 加賀さんのふとした思いつきにニコニコお付き合いして自在に変身してくれるこけしたち。なかなか気の良い可愛い子たちではないですか。
もちろん、フードやドリンクだってこけしづくし。ご近所の豆腐屋さんから仕入れる県産100%大豆のおから、国産小麦、きび砂糖でつくったオールドファッションドーナツ「こけしドーナツ」(¥200)は必ず食べてほしい一品。ドーナツ専用のお皿が可愛すぎです! 自家焙煎したコーヒー豆をネルドリップで抽出した「こけしコーヒー」(¥380)とご一緒に。
ちょっと小腹がすいているなら、オリジナルの「しそ巻きロールパン」(¥200)を。甘じょっぱいお味噌をしそで巻いた郷土食の「しそ巻き」。あまり知られていませんが、実はこの川渡で生まれたものなのだそう。白いごはんのおともという従来のイメージを覆し…これが意外や意外、胡麻の風味と溶け合って、もっちりした天然酵母のパンに合う! 新しい川渡名物になりそうな予感です。
日によって、トマトベースの本格スパイシーチキンカレー「地獄谷カレー」やパンとサラダのセットのランチも食べられるので、是非ブログをチェックしてみてくださいね。
おはしやボールペンなどの小物が人気という物販コーナー。どれも味があって家に連れて帰りたくなります。町おこしに勤しむこけしくんを主人公にした、奥さまお手製の絵本もめでたくシリーズ化。
こけしをきっかけに、奥さまの故郷にUターンした加賀さんご夫妻。昔からの友達、地元の人、そして新しい仲間、みんなが集える空間をつくることで、地域を盛り上げる一助になれればとこの場所をスタートしました。人々の笑い声に入り交じり、こけしたちのおしゃべりも聞こえてきそうな『準喫茶 カガモク』。なんと春は窓から美しい桜が見えるそう! 川渡の豊かな自然とお肌を潤してくれる温泉、そしてほっこり可愛いこけしたちに会いに是非足を運んでみてください。
“まめこけし”見つけました
置き物としてももちろん、ネックレスなどアクセサリーにもなる「まめこけし」。不定期に開催されるワークショップでつくれちゃいます!
準喫茶 カガモク
※このページの情報は2017年10月13日現在のものです。
【ライター 鈴木紘子】【撮影 門山夏子】