宮藤官九郎さんが監督・脚本を手がける最新映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』が、6月25日(土)から全国の映画館で大ヒット公開中。宮藤監督といえば、ご存じ宮城県は栗原市の出身! 映画の公開に先駆けて、「大人計画」やバンド「グループ魂」の仲間で、本作にも出演している福島県出身の俳優・皆川猿時さんと一緒に仙台を凱旋訪問されました。楽しい雰囲気で繰り広げられたおふたりの対談インタビューの模様を、映画の見どころとあわせてお届けします!
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フツーの高校生・大助(神木隆之介)が、修学旅行中に不慮の事故に遭ってしまい、地獄に落ちてしまう。「なんで俺だけ!? まだキスもしたことないのに、このまま死ぬには若すぎる!!」。慌てる大助を待ち受けていたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」を率いる赤鬼のキラーK(長瀬智也)。キラーK によると、えんま様の裁きにより現世に転生するチャンスがあるという! 現世に戻って大好きなひろ美(森川葵)と再会するため、大助はキラーK の“鬼”特訓を受けることに。地獄を舞台に、<地獄の赤鬼先生>と<キスもできずに死んじゃった高校生>が、ロックバンドで生き返りを賭ける地獄めぐりコメディ。
これぞ、宮藤作品の真骨頂! 前代未聞の笑撃作
映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は、宮藤監督にとって4作目の映画作品。監督としてこだわったことは?
宮藤:こだわったというより、今回は“映画らしくする”っていうこだわりを捨てました。僕は演劇出身で、ドラマも映画もやってるんで、自分の中でなんとなくそれぞれを住みわけし始めていたんです。でも「俺が映画らしく作る必要、ないじゃん!」って気づいて。僕みたいに時々自分でやりたいことだけやっている映画監督は、そんな細かいことにこだわんなくていいんじゃないかなと思ったんです。
地獄のシーンは全部ひとつのセットで撮影しちゃおうとか、現世のシーンでは主人公が動物に転生してる、とか。自分が舞台では自由にやっていたことを映画の中でもやってみたいなーって。僕に求められていることって、やっぱりバカみたいなテンションと、振り切れたコメディなんじゃないかなと思ったんで。それは最初から一貫して意識していました。
キャスティングも冒険的! まさかの、皆川さんが女子高生役だなんて…!
宮藤:舞台とか、バンドの「グループ魂」のライブでは、しょっちゅう女子高生の格好をしていたので、別に自分の中でそれは違和感なかったんですけど。果たして、それが映像で表現したときに許してもらえるのかな?っていうのはありましたね。さっき言った“映画らしくなさ”の、いちばん極端な例かもしれないですね(笑)。
キャスティングの狙いは?
宮藤:自分の中でこの映画の設定を決めたときに、キラーKが長瀬くん、地獄にいるライバルの女子高生バンドのリーダーが皆川くんっていうのは、最初に決まっていたんですよ。それは地獄だから、いるはずのない鬼がいるのも、オッサンが女子高生やってるのも同じで。それが共存することで、この映画の“許される嘘”のラインが決まるかなと思ったので。長瀬くんのお芝居に関しては、もう人間じゃないんだから、僕と長瀬くんさえブレていなければいいんだ、っていう思い込みに突き動かされて撮ったような感じです。
出演のオファーをもらったとき、皆川さんはどうでしたか?
皆川:メールでね、「映画をやるんだけど、女子高生の役を皆川くんでいきたい」ってきたんですよ…。「大丈夫ですか?」って返信しました。大丈夫?っていうのは、頭が。
宮藤:俺の頭が(笑)! いろんな人から「(じゅんこ役は)本当に皆川さんですか?」って言われましたね。スタッフからも何回も「これはいいの?」って。うちの事務所の社長にも言われました(笑)。僕の中で迷いはなかったんですけど、女に見えるかどうかっていうことよりも、高校生に見えるか見えないか、ですよね。それは難しかったけど、でもやっぱりおもしろかった!
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じゅんこ役の皆川さん、女子高生らしさにこだわった部分は?
皆川:処女である、ということ。宮藤:あはははは!
皆川:まず現世のシーンから撮ったんですけど、現世ではまだ汚れを知らない普通の女子高生だったわけですから。だから清楚でありたい、下品に見えたくないなっていうのはありました。地獄のシーンになると顔に血つけてるし、みんな汚くしてたから全然大丈夫だったんですけど、現世では清楚なイメージだったので緊張しましたね。ほんとに僕でいいのかしら、って。でも宮藤さんが、「すごくキレイだよ、キレイだよ」と言ってくださるんですよ。
宮藤:だって、俺が言わなきゃしょうがないじゃん!(笑)。なんか、まんざらでもないみたいなリアクションが面白くて、しつこく言いました。
皆川:騙されながらやっていましたね。現世のシーンが最初だったおかげで、逆に地獄のシーンではのびのびと解き放たれて、すごく楽しくできました。最終的には、ただおじさんがふざけて暴れ回っているだけになってましたが。
聴いてしまったら、思わず落ちる♡ 地獄のロック
地獄でのライブシーンはものすごい熱量でしたが、何かエピソードがあれば教えてください。
皆川:ステージがすごいんですよ。せり上がっていくようにぐぁぁって動いて。お客さんもいるし、大音量だし。そんでもうみんな血だらけのメイクで。解放されてやってる感じがおもしろかったですね。みんな発散してるから、ものすごく疲れるんです。「もう一回」って言われて、もう一回かよーって思ったりするんですけど、逆にすぐOKが出たりすると寂しくなったりなんかして。みんな集中してやっていましたね。
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豪華アーティストもたくさん登場! 共演されてみて、いかがでしたか?
皆川:マーティ・フリードマンさんとROLLYさんが、僕の分身となって演奏してくれる役だったんです。共通点としては、みんな髪がキレイ! そんで、すごく目がキレイなんですよね。高級な犬…、金持ちの家で飼われている犬みたいな。宮藤:ははは!
皆川:で、あんなスゴいんですから、大したもんですよ。そういう人たちと共演できるなんてほんとにないことなんで、ご褒美だなっていう感覚でしたね。すごく楽しかったです。
宮藤:あんなにギター練習してもらったのに、皆川くんほとんどギター弾いてないよね? 分身がすごい弾いてくれるから、皆川くんはほとんど弾かなくてよくて。だったらあんなに練習しなくてもよかったよね。
すみませんでした(笑)。
主題歌を除くほとんどの音楽はZAZEN BOYSの向井秀徳さんがご担当。宮藤監督から向井さんへリクエストされたことはありますか?
宮藤:今回は劇中曲が多いので、台本と一緒に歌詞を書いていました。向井さんには今まで僕の映画をすべてやってもらってるっていうのもあるし、歌詞も含めて台本を渡していたんで、あえてあまり説明はしなかったです。こっちの要望は言わずに、向井さんならどういうふうにするかを聴きたかったんで。そしたら、だいたい僕が思っているのと違うものがきました(笑)。でも、その上がってきた曲をどういうふうに演出で生かすか、考えましたね。誤解が生じてもそのまま間違った方向にいこう!と思いました。
中でもいちばん印象的だった曲は?
宮藤:「天国」という曲。予想外にストレートなバラードが出来てきたんです。歌詞を読んだときに、向井さんが「ここは照れずにバラートでいった方がいいんじゃないか」って思ったみたいで。あまりにストレートな曲が上がってきたので、それはまた、裏の裏をかかれたような気持ちがありましたね。
若いエネルギーにあふれた撮影現場
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神木隆之介さん演じる「大助」もハマり役でしたね!
宮藤:物語の冒頭で大助が地獄に落ちて、観てるお客さんも地獄ってどんなものかなんとなくイメージして観てるんだけど、大助だけが地獄をよくわかってない、っていう感じにしたかった。喋り方とか発言が、わりと調子のいいヤツで。台本を練っていく段階で、神木くんがやったらおもしろいんじゃないか?と思ったんです。神木くんって、今までの映画やドラマでは、台詞を多く言うっていうよりは、佇まいとか無言のうちに物語る役者さんで、皆さんも雰囲気ある役者さんという印象だと思うのですが、敢えてそれをひっくり返したいな、と。普段はけっこうおしゃべりなんですよ。皆川:うん。うるさいですよね。
宮藤:そうなんです(笑)。だから、それを生かしたいなって思って。大助に関しては、神木くんがこれ言ったらおもしろいだろうな、イメージとは全然違うシーンがいいな、っていうふうに台本を書いていきました。
皆川:僕、最初に撮ったのが現世での修学旅行のシーンで、神木くんたちとの絡みだったんですよ。みんな若いわけでしょ。話合わねぇな、俺誰とも仲よくなれないわ、って思いましたよ。世代の壁を感じました。でも、そういう違和感がこの映画のおもしろさなんだろうな、って。
宮藤:そうだよね、みんな二十歳くらいだったもんね。
皆川:みんなキレイでかわいくてね。男も女も。若い人にさらされたときの自分のおじさん加減っていうのが、もう恥ずかしくなるくらい! オナラもすごく我慢しました(笑)。若いっていうのは驚異だなって思いましたね。
映画のタイトルにも「若くして」とありますが、ズバリ、おふたりが考える“若さ”とは?
宮藤:ここ何年かですごく歳をとったよね。僕たち同い年で、劇団のメンバーもだいたい同世代で一緒に歳をとってきたんです。まわりが変わらないから、自分が変わったことにも気がつかず、ずーっと学生気分でやってきたんですけど。こうして若い人たち(神木さんたち)とふれ合うと、ほんとにヤバイよね! 違うなぁって。当たり前だけど(笑)。若さのために何かしてる?
皆川:うーん、特にないですね…。モテたい!とか、だんだん減ってきたじゃないですか。
宮藤:はぁ。え、まだモテたいの? 減っても、なくなってはいないんでしょ?
皆川:なくなってはいない。なんとなくモテたい。もうそれがなくなると、若さはなくなりますよね。60過ぎた人でも、やっぱりモテたいと思ってる人はピンとしてる。結局、異性ですよ! 若さって。
宮藤:若さとは、異性によって保たれるもの。
皆川:そうだと思いますね。宮藤さんって、ものすごく体力がありますよね!
宮藤:こう見えて、意外と病気しないもんね。皆川くんだって、基本的に移動は自転車じゃない。
皆川:痔の手術をしたばっかりなんで、今自転車に乗れないんですよ。早く乗りたいです、自転車に。
宮藤:ははは! なんの質問かわからなくなっちゃった(笑)。
映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は6月25日公開です! ぜひ劇場でご覧いただきたいと思います!
皆川:もう最高の映画でございます。人はなぜ人を好きになるのか、そして、なぜ死んでいくのか、死んだ後に何が待っているのか…。そんなことを盛り込んでおります。ぜひ劇場で観て、笑って、一筋の涙を流してください。
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おっとりとした口調でサラッと笑いを誘う皆川さんに、爆笑しながらツッ込む宮藤監督。おふたりの掛け合いがとても愉快で、インタビュー中、こんなにも終始笑っていたのは初めてです。すみません、こらえきれませんでした(笑)!
映画はさらに超笑えます!!(試写会でみんな大爆笑!)強烈に濃厚なキャラクターたち、一度聴いたら忘れられないロックナンバー、ありえない設定なのにどこか人間臭くてジーンとくる…。宮藤官九郎ワールド全開の、爆発的におもしろい映画が舞い降りました。
個人的に、子供の頃からずっと“地獄”がとても恐怖でした。なぜ怖いかって、誰も見たことがないから。そんな未知の世界をこんなにもおもしろく素敵に描いてくださった映画に出会えて、ちょっとだけ地獄が怖くなくなったようです。
『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』
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監督・脚本 宮藤官九郎
配給 東宝=アスミック・エース
映画公式サイト http://tooyoungtodie.jp/
MOVIX仙台、MOVIX利府、109シネマズ富谷、チネ・ラヴィータ、イオンシネマ石巻、イオンシネマ名取、シネマ・リオーネ古川にて、6月25日(土)より公開中!
【ライター 池田直美】