
まあたらしい家々が建ち並ぶ荒井の住宅地の中に、小さなカフェがオープンしたのはこの7月。“KEYAKI”と“COFFEE”の名の通り、木のぬくもりとコーヒーの香りに包まれたお店はカフェと喫茶店の中間のような雰囲気です。

カフェ好きはもちろんのこと、散歩中の町のおばあちゃんから喫茶店に入り慣れた近所のおじさん、甘い物に目がない子供まで、訪れる人を選ばないウェルカムな空気感。

お店を切り盛りするのは松木さんご夫婦。おふたりともここからほど近い深沼海岸の出身です。もともと羽田空港で整備関係の仕事をしていたというご主人の勇介さん。だんだんと自分の好きなことを生活の糧にしたいと思うようになり、25歳の時に一念発起。今でこそよく耳にするようになった「スペシャルティコーヒー」という言葉ですが、その先駆けともいえる長野の『丸山珈琲』にバリスタとして転職しました。

28歳で独立すると決め、コーヒー豆の仕入れ、焙煎、抽出…すべての過程に独自のこだわりを持つ丸山のコーヒー文化をじっくり吸収。そして迎えた『KEYAKI COFFEE』開店の日は、29歳の誕生日直前だったとか。おっとりとした勇介さんの奥底にひそむ、並々ならぬ行動力と実行力を感じるエピソードです。

コーヒーというとハンドドリップを思い浮かべがちですが、『丸山珈琲』では紅茶を淹れる時によく使われるフレンチプレスを採用しています。そしてもちろん『KEYAKI COFFEE』でも。ペーパーではなく金属フィルターを使うフレンチプレスは、コーヒーの油分まであますことなく抽出します。だからコーヒー豆本来の香りや美味しさを損なわず、豆の個性をそのまま味わうことができるというわけ!

コーヒーを注文するとメーカーごとテーブルに運ばれてくるので、おかわりを含め約3杯ぶんいただけるのもうれしいポイント。デザインも可愛いですね。この日はアプリコットとチェリーを思わせる甘やかな口当たりの「ブラジル・ジアス・ぺレイラ」(¥650)を淹れていただきました。豆は『丸山珈琲』から買い付けており、KEYAKI COFFEEオリジナルブレンド、ブラジルやエチオピア、ホンジュラスのコーヒー農園から選び抜かれたシングルオリジンコーヒーをフレンチプレスで楽しめます。

そしてコーヒーとともに是非オーダーしたいのがカプチーノ(¥550)。丸山の看板を背負って「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」に出場したこともある勇介さんは、ラテアートの腕前も一級品です。エスプレッソにフォームドミルクを注ぎ…。

あっという間にドリーミーなハートの三重奏!

フードはコーヒーに合うものをシンプルに。宮城野区萩野町の人気ベーカリー『ブーランジェリー・ジラフ』の4枚切り厚切り食パンをトーストし、長野のミックスベリージャムとカルピスバターを添えて。(※ジャムは季節により素材が変わります)

ケーキはしっとりふわふわガトーショコラ(¥400)と濃厚チーズケーキ(¥420)の2種。若林区伊佐で愛され続けている『cake café GRUN』から仕入れています。ずっしりとしたガトーショコラが多いなか、こんなに優しくふんわりとした食感は感動もの!

工務店を経営しているおじさん、生花の仲卸しをしているおじさん、左官をしているおじさん…松木さん夫婦には頼りになるたくさんの「親戚のおじさん」がいました。シンプルながらインテリアや小物類にどこかあたたかみを感じるのは、店づくりに力を貸してくれた彼らのおかげかもしれません。

さりげなく置かれた窓辺の雑貨やプラントに癒されます。

テイクアウトのオリジナルコーヒー豆パッケージは、お友達のお母さんが作ってくれたそう。

ただいまランチメニューとしてクロックムッシューを検討中のおふたり。これまたコーヒーにぴったりな一皿! いずれはコーヒー教室も開いてみたいとのことで、コーヒーにまつわるあれこれを肩ひじ張らずにマイペースに広げていく、そんな姿が印象的でした。
“ちょこっとテラス席”見つけました

KEYAKI COFFEE

仙台市若林区荒井字梅ノ木107番地(54B-13L)
022-208-2647
9:30~18:00
月曜、第二・第四日曜定休
※価格はすべて税込です
※このページの情報は2016年8月5日現在のものです。
【ライター 鈴木紘子】【撮影 門山夏子】