ハスの名所、長沼の湖畔に佇むアンティークカフェ宮城のカフェ＆スイーツ＊78話『グリムの森』

●本日のカフェ＆スイーツ
『グリムの森』
エリア：登米、迫町、長沼
ジャンル：湖畔カフェ、アンティークカフェ
テイクアウトメニュー：なし
ペット同伴：店内NG

ぐるっと全周約24kmもある、宮城県で一番大きい湖沼「長沼」。ハスの群生地で、夏の「長沼はすまつり」が有名です。一面にピンクの花が咲き誇る光景は、極楽浄土と言われるほど幻想的。周辺ではアスレチックやキャンプもでき、豊かな自然に囲まれています。

そんなのどかで美しい長沼を望む兵粮山公園の一角に、カフェ「グリムの森」があります。森の中の湖畔に佇む姿が、まるで絵本に出てくるおうちみたい。

外まで聞こえる、優雅なジャズの音色に招かれるように入口へ。扉を開けると音が大きくなり、一歩足を踏み入れると、アンティークやヴィンテージの家具が配された素敵な空間が待っていました。

席によって異なるテーブルと椅子。ゆったりとした距離感で並んでいます。

窓の外には長沼。窓が額縁となり、絵画のような風景を切り取って見せてくれます。

「忙しい日々や長引くコロナ禍で、皆さんお疲れでしょう。美しい景色に癒されながら、ゆっくりとくつろいでほしい」「地元の登米市を盛り上げたい」。そうした思いから、店主の齋藤美子さんは2022年12月24日にこの場所でカフェをスタートしました。

長年、飲食店で料理の腕を振るってきた齋藤さん。できるだけ地元産の野菜をたっぷり使い、「まで〜に」調理することを心がけています。「まで」とは、このあたりでよく使われる宮城の方言で、「丁寧」という意味。フレッシュなまま、蒸して、焼いて。まで（丁寧）に調理された料理は、素材一つひとつのおいしさが活きたやさしい味わいです。

◆グリムランチ 1,300円
店名を冠したイチオシのグリムランチ。内容はその都度変わり、肉料理か魚料理を選べます。この日の肉は鶏肉の甘じょうゆ焼き（写真）、魚はカレイのバジルソースがけでした。ライスとコーヒー付き。オーダーは14:00まで。モチモチの生麺を使った日替わりパスタ（1,000円）もあります。

◆グリムケーキ 500円
齋藤さんお手製の米粉ケーキ。米粉を使って焼いたパンとピザも、ときどき登場します。

「カラダは食べたものでできているから、なるべく安全安心でヘルシーな素材を厳選しています。でも、どんなにいいものを使っても、嫌な気分でつくった料理、文句を言いながら食べた料理は毒になります。料理は愛情を込めてつくり、楽しんで食べることで、栄養になると私は思うんです。だから、つくりたくないと思ったときには、つくらない。そう決めているんです」と、齋藤さんは話します。

潔い覚悟。すべての料理を仕込みから一人で行っているため、「お客さまをお待たせしてしまうときも…」と申し訳なさそうに話すほど、毎日大忙しです。しかし、齋藤さんが「つくりたくない」と思ったことは、今まで一度もありません。自分のつくった料理で、食べた人が笑顔になってくれるとうれしいから。

来てくれたお客さまに精一杯のおもてなしをするために、齋藤さんが大事にしているのは、お気に入りに囲まれた空間でリラックスして仕事をすること。「もともとアンティークやヴィンテージの家具が好きで、落ち着くんです。インテリアに関しては、ごめんなさい。お客さまのためというより、私の趣味です」と、おちゃめな笑顔で打ち明けてくれました。

時間を忘れて、ずっと見ていたくなる景色。座り心地がいい椅子。インテリアと調和するように添えられた植物、ドライフラワー。

随所に、齋藤さんのセンスと美学を感じます。視界に入るものが心ときめくものばかりだから、いるだけで自然と気持ちがポジティブに。

毎朝、店内を歩き回って「おはよう」「今日もよろしくね」。営業後には「ありがとう」「お留守番お願いね」と、齋藤さんは空間やものに挨拶をしているそう。だからか、調度品もお花も野菜も、みんなのびのびと息づいているように見えました。本当に絵本の世界みたい！

「料理が出るまでの間にどうぞ」と、店内にはブックコーナーも。
絵本好きの齋藤さんがグリム童話から名づけた店名のように、物語を感じるカフェ「グリムの森」。仙台市内からは車で1時間以上と、けしてアクセスしやすい場所ではありません。それでも、四季折々の長沼と野菜たっぷりのランチ、齋藤さんに会いたくて、また行きたくなります。