古民家でいただく、甘やかなおやつとごはん。富谷にはちみつ茶屋ができました。宮城のカフェ&スイーツ*71話『いい茶や』

●本日のカフェ&スイーツ
『いい茶や』
エリア:富谷市、富谷しんまち、泉
ジャンル:古民家カフェ、はちみつカフェ、地産地消カフェ
テイクアウトメニュー:あり

江戸時代に宿場町として栄え、今もその面影を残す富谷市しんまち地区に、2021年5月にオープンした富谷宿観光交流ステーション「とみやど」。もう行きましたか?

まちの偉人である内ヶ崎作三郎の生家、内ヶ崎醤油店の跡地を活用した富谷の新たなランドマークスポット。重厚な門をくぐると、歴史ある醸造樽や蔵、母屋とともに、地元の店主による飲食店やショップが軒を連ねていて、まるで宿場町の風情と活気がよみがえったかのよう。

そんなとみやどにある「いい茶や」は、富谷産の生はちみつと地元食材を使った食事、甘味を楽しめる茶屋。はちみつが主役のお店って、珍しいかも!? 実は、富谷市は2016年から市役所本庁舎の屋上で養蜂に取り組んでいます。いい茶やは、その「とみやはちみつプロジェクト」の実行委員であり、人・自然・地域のつながりを大切にした活動を行うNPO法人SCR(エスシーアール)の皆さんが手がけるお店です。

趣のある建物は、かつて内ヶ崎醤油店の倉庫兼、従業員部屋として使われていた古民家をリノベーション。1階には、カウンター席と下屋を活用した風通しのいいテラス席があります。

靴を脱いで階段を上ると、2階は座敷席になっていました。

歴史を感じさせる店内を見渡したり、窓から見えるとみやどの風景を眺めたり。

時を超えて、なんだか遠くまで来たような旅気分に浸っているうちに、注文した料理が運ばれてきました。


◆いい茶やお膳 1,380円
これぞ、ランチタイム(〜14:00)のお目当て。市内にある自家農園で農薬を使わずに育てた蜜源野菜をはじめ、地元でとれた旬の食材をふんだんに使ったお膳は、思わず声を上げてしまうほどの品数と彩りです。味噌汁には自家製味噌を使用。富谷産の米に黒米と赤米を混ぜたごはんは、おかわり無料なのもうれしい。

料理の内容は日によって変わります。この日のメインは、ローストポークのハニーマスタードソース。肉料理は下味を付ける前にはちみつをひと塗りすることで、やわらかくジューシーに。湯むきしたトマトをはちみつに漬け込んだり、すりおろしたニンジンとはちみつを混ぜてドレッシングを作ったりと、はちみつを隠し味に使っているのがいい茶や流です。

店長の福井公美子さんは、みやぎ食育コーディネーターで日本はちみつマイスター協会認定のアドバイザー。「はちみつは、万能な天然の甘味料。パンやヨーグルトにかけるだけではなく、料理にも活用して楽しんでください」と、レシピの紹介も兼ねて、工夫を凝らしたはちみつ料理を提供しています。もちろん、使用しているのは、とみやはちみつプロジェクトで採蜜したはちみつ。

百花蜜と呼ばれる種類で、富谷市周辺に咲くさまざまな花の蜜が混ざり合っています。採蜜時期によって花の種類が異なり、味や香りの違いを楽しめるのも魅力の一つ。天然のやさしい甘さに加えて、非加熱の生はちみつだから、良質な酵素、ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれていていることも注目されています。「とみやはちみつ」のおいしさをダイレクトに味わうなら、こちらのメニューがおすすめ。


◆めでたいっ茶プレート 880円
カフェタイム限定、たい焼きの形をしたユニークな抹茶味のパンケーキ。はちみつ、はちみつで煮た自家製あんこ、生クリーム、フルーツを好きなようにつけて楽しんでほしいと、このスタイルで提供するように。フルーツは旬のものを中心に、内容は時期によって変わります。この日は栗の渋皮煮も乗っていて、秋らしさを満喫!

雄勝石でできたプレートは、なんと、内ヶ崎醤油店で使われていた屋根瓦をアップサイクル。「今は新しいものがなんでも手に入る時代ですが、古くてもいいものは残し、使い続けていきたい」と、福井店長は話します。下の写真の抹茶椀は、しんまちのお茶の先生から寄付してもらったそう。


◆抹茶セット 800円
茶屋ならではの粋なティーセット。主菓子は、明治後期から続くしんまちの老舗「菓子処 いさわ屋」に特注。かもめの玉子でおなじみの岩手県「さいとう製菓」とコラボした、とみやはちみつ入りのオリジナル羊羹も添えて。抹茶は福岡産の八女茶を使用し、一杯一杯丁寧にたててくれます。

自然環境と古き良きものを大切にしながら、口に入れるものは、できるだけ手づくりと地元由来にこだわるいい茶や。食材から調理法、お皿、建物に至るまで、一つひとつに物語がありました。そして、ここまでの写真でお気づきかもしれませんが、料理や店内にはミツバチモチーフがちょこちょこ登場(!)。スタッフさんたちのミツバチ愛と遊び心に、ほっこり和みます。

ここで、ミツバチのお話を少し。私たちの暮らしに欠かせない農作物の多くは、ミツバチが運んだ花粉によって実ります。しかし今、農薬などの影響でミツバチが減少しているのを知っていますか? いい茶やを運営するSCRの皆さんは、養蜂をはじめ、農業、林業、食育など、さまざまなアプローチからミツバチと共存できるまちづくりに取り組んで5年。その活動の旗艦店となるいい茶やでは、小さなミツバチたちが市内を駆け回って集めたはちみつを、料理でおすそ分けしながら、命の尊さと自然の営みを伝えてくれています。

最近では、地域の人々が庭に花を植えて蜜源に協力してくれるようになったり、除草剤の使用を控えるようになったりと、いい茶やをきっかけにポジティブな動きが広まっているそう。まずは、私にもできることから。難しく考えなくても、いい茶やで食事やお茶を楽しむ時間が、ミツバチの保護活動をサポートすることにつながると思うと、お腹も心も豊かな甘さで満たされます。

左から、いい茶やを切り盛りするNPO法人SCRの千葉さん、福井さん(店長)、佐々木さん。ミツバチを愛する女性たちに、はちみつの新たな楽しみ方を教わりました。

“ハニービール”見つけました


この秋に誕生したばかり! とみやはちみつを使用したクラフトビール「蜂蜜麦酒」(330mL・880円)が、店内で楽しめます。はちみつのやさしい香りと甘さがふわり。はちみつグルメと一緒にどうぞ。

過去に取材した「とみやはちみつプロジェクト」の記事はこちら

いい茶や

イイチャヤ

住所/富谷市富谷新町111−1 とみやど内
TEL/070-1147-8383
営業時間/11:00~15:00、土日・祝日〜17:00(L.O.各30分前)
定休日/火曜 ※ミツバチのお世話や畑仕事のため、不定休あり
Instagram/tomiyaiichaya

※表示価格はすべて税込みです。
※内容は一例です。時期によって変わります。
※このページの情報は2021年10月22日現在のものです。
※最新情報はInstagramを確認してください。

【ライター 池田直美】【撮影 山口 晃】

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