仙台市街から車で北に向かうこと約30分。わざわざ足を延ばして訪れたい素敵な古民家カフェが、ここ富谷町にオープンしました。
富谷というと、どんなイメージが浮かびますか? 郊外のベッドタウン? それとも先月オープンした話題のコストコ? いやいや実は、伊達政宗の命で宿場町が設けられた歴史を持つ古い町なんです。
そんな古き宿場町の面影をさりげなく残す界隈に誕生した、「cafe hito no wa」(カフェ ヒトノワ)。築100年近い民家をリノベーションしたモダンな一軒家カフェです。
玄関で靴を脱ぎ、そっと中に上がると、外から差し込む陽の光と室内のしっとりとした空気が調和した、まさに古民家ならではの雰囲気。室内の明るさと暗さのバランスがほどよくて、いつまでもまったりと長居してしまいそうに。
なかでも「cafe hito no wa」らしい雰囲気づくりに一役買っているのが、多様な障子の組子デザイン。幾何学的で繊細な意匠が施された書院障子や、一部分に曇りガラスをはめ込んだ雪見障子、縦長に形どられた柳障子…普段なかなかお目にかかれない障子の数々。その昔、この家で暮らした人々の日常を想像しながら時を過ごすのも素敵です。
障子だけではありません。中央の美しい欄間にも注目! チクタクと時間を刻む古時計がこれまたいい味。
オーナーの梅津英紀さんは、富谷生まれ富谷育ちのれっきとした富谷男子。故郷であるこの町で、農業のかたわらお菓子のアトリエ「hito no wa」を営みながら、いつかいろんな人が集う場所をつくりたいと思っていたそう。運命に導かれるようにこの古い家に出会い、二十歳の頃から長く夢見ていたカフェを開くに至りました。
地元のパン屋「メランジェ」さんに特別に焼いてもらった焙煎五穀のパンを添え、地場野菜を多く取り入れたランチメニューも外せませんが、梅津さんの本領が発揮されるのはやはりスイーツ。看板メニューの「濃厚ショコラ」(¥580)は、ケーキというより生チョコを食べているような重みのある深いコクがギュッと凝縮! 聞けば、フランスの老舗チョコレートブランド「ヴァローナ」のチョコレートを贅沢に使用しているとか。
平日は濃厚ショコラとベイクドチーズケーキの2種。休日は生クリームをたっぷり使った抹茶ババロアとクレームブリュレ、そしてモチモチ食感がクセになるポップオーバーなどが加わり、4~5種のスイーツが楽しめます。もちろんすべて手作り。「ミキサーは使わず、すべて泡立て器で。そのほうが美味しくなる気がしませんか?」とは梅津さんの弁。
スイーツのおともには、スイーツを引き立たせるあっさりした美味しさを求めて何度も焙煎してもらったオリジナルの「hito no wa ブレンドコーヒー」(500)と、やわらかめの優しい味わいの「tomiya ブレンドコーヒー」(500)がおすすめです。向かいの商店もで売っている昔ながらのかりんとうを添えて。
もうひとつのこだわりが食器。陶芸作家イイホシユミコさんの器で統一。優しくてあたたかい色合いが梅津さんのつくるスイーツと、この古民家の空気にぴったりです。
押入れだった場所は、ふすまを取り払い、ドライフラワーのオブジェやトートバッグ、アロマキャンドル、古いミシンなどをセンス良くディスプレイしたおしゃれ空間に。「古いものにモダンさを加えて、この家を新しく生まれ変わらせたい」という梅津さんの想いを汲んで、アーティストの友人たちが家の空気感に合った作品をそれぞれ持ち寄ってくれたそう。
「hito no wa」という店名の通り、様々な人の輪がこのカフェをつくり上げ、新しい和を生み出しているようです。
“素敵リノベーション”見つけました
イイホシユミコさんの作品集が鎮座したミニスペース。もともとは仏壇がおさめられていた場所だとか!
cafe hito no wa
カフェ ヒトノワ
黒川郡富谷町富谷字町108
022-725-7313
11:00~17:00
金曜定休
※金額はすべて税込みです
※このページの情報は2016年5月13日現在のものです。
【ライター 鈴木紘子】【撮影 門山夏子】