「これって、私だけ?」「人には相談しづらい…」。女性ならではの疑問や本音について、カフェのような空間でリラックスしながら語り合う“カラダ本音カフェ”。3回目となる今回は、東北大学病院 産婦人科の富田芙弥先生にお越しいただき、「プレコン」をテーマに開催しました。
教えてくれたのは
東北大学病院
産婦人科
富田芙弥先生
参加者
(左から)富澤香子さん、菅野柚花さん、宮嵜瑛子さん(全員20代)
プレコン
・プレコンセプションケアのこと。
・将来の妊娠を考えながら、日々の生活や健康を整えることが目的。
・女性の社会進出による晩婚化などにより妊娠を考える年齢が上がっていると言われる中、重要性が高まっている。
皆さんはプレコン、いわゆるプレコンセプションケアという言葉を聞いたことがありますか?座談会ではまず、なぜ今プレコンが注目されているのかを富田先生が解説。妊娠・出産についてまだイメージがわかないという20代の参加者に、今からはじめるプレコンのポイントについて教えてもらいました。
なぜ今、プレコンが大切なのか?
富田先生:プレコンは、プレコンセプションケアの略で、妊娠する前の女性やカップルに健康介入を行うことと定義されています。もっと簡単に言うと、将来の妊娠を見据えて日々の生活や健康を整えましょうということで、最近これがすごく大切だと言われています。
理由は、35歳以上で出産される方が増えてきているから。2000年のデータでは35歳以上で出産された方が全体の10%ほどですが、2016年になると30%になり、最近では40歳以上で産む方も随分増えています。そのこと自体はすごく喜ばしいことですが、残念ながら年齢が上がると出産のリスクが増えるということが分かっています。
宮嵜さん:なぜ年齢が上がるとリスクが増加するのでしょうか。
富田先生:妊娠・出産は誰しもリスクを伴うものですが、それがより増える要因として、高血圧や糖尿病、肥満、子宮がんや子宮筋腫などの婦人科系の病気があげられます。年齢が上がるとそれらの有病率も増加。例えば高血圧の方は妊娠高血圧症候群、糖尿病の方は妊娠糖尿病などの合併症が起きて、妊娠・出産のリスクが増加すると考えられています。
富澤さん:私は母が36歳の時に生まれました。35歳以上になるとお産に伴う危険な割合が意外と高いと感じたので、命がけで産んでくれた母に感謝ですね。
菅野さん:私の母は今の自分と同じ年に出産しています。ただ、今の自分は仕事に打ち込んでいて結婚もまだなので、このまま過ごして出産のリスクが上がる年齢になってしまったら…と少し不安が募りました。
次の世代につなげるために!
富田先生:皆さんの年齢では今すぐ妊娠のことを考えられない方が多いと思いますが、実は日本人の4割ほどは子どもをつくろうと思って妊娠したわけではなく、予定外妊娠だと言われています。皆さんも素敵な出会いがあり、気づいたら妊娠していたということもあると思うので、すべての妊娠可能な年齢になった女性とパートナーに、プレコンセプションケアが大切になってきます。
妊娠中に糖尿病や高血圧などの病気になると、赤ちゃんが早く生まれてしまったり、低体重で生まれてしまったりすることがあります。またそうやって生まれた赤ちゃんが大きくなった時に、糖尿病や高血圧を発症するリスクが高くなることも分かっています。
つまり、プレコンセプションケアは、これから自分のためでもあり、生まれてくる赤ちゃんのためでもあります。そしてこれから生まれてくる赤ちゃんが大きくなって、さらに次のお子さんを産む時や、その方が成長された時までずっと影響を受け続けていくわけです。
今から気にしておきたい、体重と月経周期
プレコンセプションケアが自分と赤ちゃん、そして次の世代にとっても大切だと理解した上で、具体的に何からはじめたらいいのでしょうか?妊娠前から気をつけたいことはたくさんありますが、主に2つのポイントを富田先生に教えてもらいました。
●体重
・BMI18.5未満の痩せでも、BMI25以上の肥満でも、早産や低出生体重に影響します。
・特に日本人の若い女性には痩せが多いので注意が必要です。
富田先生:皆さん、痩せているのは健康的で、病気にもなりにくいと思っていませんか?
富澤さん:私はもともと太りづらい体質でしたが、最近体重が増えてきてBMIも上がってきました。そこで体重だけが増えないように、体脂肪率や筋肉量などが分かる体重計に乗るようにして、バランスが悪くならないように意識しています。
富田先生:素晴らしいですね!もちろん体質もあるので一概に痩せているのがダメということではありません。活動量が少なく食べる量を制限するような痩せ方だとエネルギーが低回転になってしまい、「耐糖能異常」といって糖尿病の予備軍の要素が出てきます。つまり、ただ痩せるのは危ないということ。
食事のバランスも大切です。農林水産省の食事のバランスガイドには、一日に必要な主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の量が書いてあります。特に若い人たちは牛乳・乳製品が足りないと言われているので、こういったものを参考に食べる物を選択していくと、より健康的な食生活が送れますよ。
宮嵜さん:私もあまり牛乳やヨーグルトを飲んだり食べたりする習慣がありません。
菅野さん:食事のバランスガイドは見たことがありますが、私は副菜に含まれる野菜がまったく足りていませんね…。
富田先生:皆さん、葉酸は聞いたことがありますか?ほうれん草やからし菜、高菜などに含まれるビタミンの一つで、赤ちゃんの脳や脊髄の形成に大事な成分です。妊娠に気づいた時にはすでに赤ちゃんの脳や神経はつくられ始めているので、妊娠前から葉酸を十分に摂取することが大切です。できれば食事から摂取するのが一番ですが、妊活中はサプリメントでの摂取もおすすめしています。
今すぐできるプレコンPOINT①
・農林水産省の食事のバランスガイドを参考に、健康な食生活を心掛けよう!
・大切なビタミン「葉酸」をとろう!
●月経周期
・正常なパターンは、約14日間低温期が続いたあと、高温期が14日間続き、月経がはじまる。
・低温期しかない場合は、無排卵月経の可能性がある。
・高温期が9日未満と短い場合は、黄体ホルモンの機能不全の可能性がある。
富田先生:ご自身の月経の周期や、月経に伴う体温の変動について気にされたことはありますか?
富澤さん:私は日記をつけていて、だいたい月経がきた時には「お腹が痛い」と書いてあります。それを見るとだいたい周期はこのくらいかな?と気づくことはありますね。
菅野さん:私はアプリを活用しています。月経が始まった日と終わった日を入力すると、排卵日も出てくるようになっていますが、基礎体温はつけたことがありません。
宮嵜さん:私は月経不順の時期があったので、産婦人科に通って基礎体温をつけていたことがあります。
富田先生:多くの人は月経がはじまった日を0日として14日目に排卵されます。体温は排卵した日から高くなり、月経がはじまるとまた下がるのが健康な方のパターン。
でも中には体温がずっと低い人や、高い時期が短い人もいます。例えばずっと低温期の方だと実は排卵がうまくいっていなかったり、高温期が短いと黄体ホルモンの機能が落ちていたりするかもしれません。つまり、毎日基礎体温をつけて月経の周期を知ることは、体調のバロメーターにもなるということ。ぜひ一度基礎体温をつけてみてくださいね。
また、月経についてあまり人と比較することがないと思うので、自分の月経の状態についてチェックしてみましょう。
富田先生:ひとつでも×があれば、婦人科の受診をおすすめします。将来の妊娠や出産を考える上でも大事ですが、一人の女性として健康的な生活を送る上で非常に大事なことです。
富澤さん:私は幸いなことに今のところ当てはまる項目はありませんが、月経周期をしっかり把握するとそのあたりが引っ掛かるかもしれないので、基礎体温をつけてみたいと思います。
菅野さん;月経痛は最近落ち着きましたが、頭痛や腹痛など月経前後の体調が悪いことが心配です。
宮嵜さん:私は月経の間隔や持続日数、出血量がおかしいなと思い産婦人科を受診しました。私の場合は低温期しかなく、もしかしたら排卵されていないかもしれないということで今も薬を飲んでいます。受診したことで心配があまりなくなり、ストレスが減りました。
富田先生:婦人科を受診していただくと、相談に乗ったで場合によってはお薬を使うことでそういった負担も少し軽減することもできます。ぜひ気軽にご相談くださいね。
今すぐできるプレコンPOINT②
・基礎体温をつけて月経周期を把握しよう!
・自分の月経の状態を知ろう!
将来の妊娠出産のために、今からできることを!
富澤さん:今の自分の健康が次の世代にも影響すると考えると、より一層大切にしようと思いました。また基礎体温をつけることは今からでもチャレンジできることなので、ぜひ今日からはじめてみたいと思います。
菅野さん:気をつかおうと思っていても、結局食生活がおろそかになってしまっていました…。将来的に妊娠出産を考えているので、本気で食生活の改善に取り組みます!
宮嵜さん:痩せていることもリスクにつながるというのは驚きでした。私も痩せ型なので、コロナ禍ではじめたウォーキングなどの運動で体力づくりを継続していきたいです。
富田先生:年齢が上がっても、持病が見つかったとしても、誰もが元気な赤ちゃんを産める権利がありますし、私たちはそのお手伝いをしたいと思っています。私たち東北大学病院には、将来の妊娠についてあらかじめ相談できるプレコンセプションケア外来もあるので、少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください。皆さん思った以上にご自身の体について気をつけられているので、継続してより健康的な生活を送り、将来機会があればぜひ安全で安心なお産をしていただけると嬉しいです。
座談会を終えて
今の私たちの健康が、これから生まれてくる赤ちゃんやその次の世代にもつながっていくという富田先生のメッセージが印象的でした。できることはいろいろありますが、まずは体重に気をつけることと、月経周期の把握。疑問や不安を感じた時は気軽に婦人科を受診してみましょう。
大人女子の取扱POINT
将来の妊娠出産のために、気軽に相談できる婦人科を見つけよう!
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※このページの情報は2024年6月21日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】