東北大学名誉教授の八重樫先生が座長を務める「仙臺いろはウェルネスセミナー」。今回は「産婦人科医と考えるカラダのこと…大事なのは“知る”こと」をテーマに開催されました。本記事ではセミナーの内容を抜粋してお届けします。
仙臺いろはウェルネスセミナー 「産婦人科医と考えるカラダのこと…大事なのは“知る”こと」
2024年10月14日、仙台市内で開催
教えてくれたのは
<座長>
東北大学 名誉教授
仙台赤十字病院 院長
八重樫 伸生(やえがし のぶお)先生
<コーディネーター>
東北大学大学院医学系研究科 周産期医学分野教授
東北大学病院 周産母子センター長 齋藤 昌利(さいとう まさとし)先生
<講師・パネリスト>
東北大学病院 産婦人科 助教
富田 芙弥(とみた はすみ)先生
<講師・パネリスト>
仙台赤十字病院 産婦人科 部長
佐藤 多代(さとう かずよ)先生
セミナーの内容
【第1部】富田先生による基調講演「今日からはじめる! オトナ女子のセルフケア“プレコン”について」/佐藤先生による基調講演「更年期を“幸”年期に!」
一児の母でもある富田先生。ご自身の出産エピソードも交えながら、お産のリスクや妊娠前から自分のココロとカラダを整えておくことの大切さをお話しいただきました。また、佐藤先生からは、更年期や老年期をすこやかに過ごすための治療法やセルフケアのアドバイスも。「一人で抱え込まないで」という言葉が印象的でした。
【第2部】パネルディスカッション「女性のヘルスケア~ココロとカラダを健やかに~」
更年期を迎えた方はもちろん、いずれ更年期を迎える方から更年期を過ぎた方まで。幅広い年代の方が参加した本セミナー。参加者からは事前に多くの質問・相談が寄せられ、齋藤先生、富田先生、佐藤先生には、丁寧に分かりやすく質問に答えていただきました。
【はじめに】座長・八重樫先生からご挨拶
毎回「仙臺いろはウェルネスセミナー」は、女性のカラダを考えるというテーマで開催しています。今年は2つのテーマを設けました。これから「妊娠をしたい」「出産をしたい」と考えている方々に向けて、「プレコンセプションケア」の話を富田先生から。また、更年期の方や、これから更年期を迎える方に向けて、佐藤先生から「更年期を幸せの“幸”年期にする」という話をしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(八重樫先生)
富田先生がプレコンについて解説!
【第1部】「今日からはじめる! オトナ女子のセルフケア“プレコン”について」
今、注目のヘルスケア!プレコンセプションケア
プレコンとは?
(以下すべて富田先生)プレコンとは、プレコンセプションケアの略。妊娠する前の女性やカップルに、生物医学的、行動学的、社会的な健康介入をすることです。簡単に言うと「将来妊娠することを見据えて、自分のココロとカラダを整えておきましょう」という概念で、最近注目されています。
なぜ今、プレコンが注目されているのか?
1つは高齢妊娠の増加という問題があります。30歳以降に結婚する方が増えてきた結果、35歳以上で出産する方が増加。2000年頃には35歳以上の高齢妊娠は全体の妊娠の1割程度でしたが、2016年には3割ほどに増えています。現在はさらに増加。首都圏では4割を超えていると言われています。
年齢によって出産のリスクが増加する
妊娠・出産に年齢は関係ある?
妊娠・出産は若すぎてもよくありませんが、35歳を超えると赤ちゃんの死亡率が増えます。また、稀ですが、今でもお母さん自体が妊娠・出産で亡くなられてしまうケースがあり、それも年齢が上がるごとに増加。そのため産婦人科医の常識では、「年齢によって出産のリスクが増加する」ということは周知の事実なんです。
なぜ年齢が上がると出産のリスクが上がるのか?
持病を持って妊娠される方が増えることが、理由の一つです。高血圧、糖尿病、肥満、子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科系の病気は、年齢が上がると罹患率も上昇。こういったことが少しずつ影響して、出産のリスクが上がっていきます。
やっぱりお産は命がけ
お産って安全じゃないの?
日本の新生児死亡率は、1/1,000程度。しかし世界ではいまだに 50人に1人、最もお産が危険な国と言われている南スーダンでは、なんと25人に1人の割合で、お産で赤ちゃんが亡くなっています。
では、お母さんはどうなのか?日本の母体死亡率は非常に低く、1/40,000程度と言われています。交通事故で亡くなられる方が1/20,000~1/30,000程度と言われているので、交通事故で亡くなる方より少ないということですね。しかし、世界ではこの割合が1/500になり、南スーダンではなんと80人に1人のお母さんがお産で亡くなっています。つまり、お産が危険なものであることは、実は今も昔も変わりがないということです。
日本のお産は安全?
日本では、「1人の母体死亡の背景には 70人ほどのニアミス症例がある」と言われています。人工呼吸器のお世話になったり、集中治療室に入ったり、お産で命の危険があった妊婦さんが70倍いるということです。それを適切な医療管理で救命して、なんとか安全を保っているというのが今の日本の医療。ただし今後、妊娠・出産のリスクが高い方が増えてくると、同じような医療体制が維持できるかということを、私たちは危惧しています。
今からプレコンセプションケアをはじめよう!
妊娠してからでは時間がない
薬剤や血糖の影響は、 妊娠4週頃から影響が出始めると言われています。皆さんが妊娠に気付く前から妊娠への影響は始まっているので、妊娠前から自分のカラダの状態を整えていくことが大切なんです。また、妊娠12週の妊婦検診の頃には、前回の妊娠で妊娠高血圧症候群や早産だった方へ適切な対応をしたり、出生前診断を考えたりするには遅い場合もあります。
妊娠する前からできること
①体重管理
②婦人科検診
③葉酸の摂取(食事やサプリメント)
④予防接種
⑤妊娠前相談
実は、妊娠するお母さんが痩せていても肥満でも、赤ちゃんの早産や低出生体重のリスクが上がります。さらに、早産低出生体重で生まれた子が大きくなった時に、高血圧や糖尿病、生活習慣病のリスクが上がるということも分かってきています。特に日本人女性は痩せが多く、これは医学的に大きな問題です。痩せている人は標準体重者に比べて体重が低く、主に筋肉量が少なく運動量も少ないエネルギー低回転タイプ。痩せているから健康というわけではありません。
また、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍、子宮頸がん、子宮体がんなど、ほとんどの婦人科の病気が妊娠・出産に影響します。今後妊娠を考えられる方はぜひ、婦人科の病気がないか検診で気にしてみてください。婦人科系の病気に気づくきっかけとして、月経はとても重要です。以下の項目に×が一つでもある場合は、ぜひ気軽な気持ちで婦人科を受診してみてください。
・月経痛は?
〇あっても軽い腹痛
×日常生活に支障をきたす痛み、薬が効かない
・月経の間隔は?
〇25~38日おき
×24日以下、39日以上
・月経の持続日数は?
〇3~7日間
×1~2日、8日以上
・出血量は?
〇20~140ml
×ナプキンを1~2時間で交換する、2.5cm以上の血の塊が出る
・月経前の体調は?
〇イライラやだるさがあってもがまんできる
×感情がコントロールできない
・月経時以外は?
〇特に問題なく過ごせている
×月経時以外でも出血や腹痛がある、貧血がある
今の健康が未来につながっていく
今の健康が妊娠中の病気などを通じて次世代につながっていきます。また、妊娠の影響は妊娠している時だけではなく、閉経された後までつながっていくので、ぜひ明日からできることをやっていきましょう。気になることがあれば、気軽に産婦人科医にご相談ください。(以上すべて富田先生)
佐藤先生が更年期について解説!
【第1部】「更年期を“幸”年期に!」
改めて知ろう、女性ホルモンと月経
エストロゲンの主な作用
●妊娠するためのカラダづくり
子宮内膜を厚くして、受精卵が着床できる状態をつくる。
排卵前におりものを増やし、精子が入りやすくする。
●女性らしいカラダづくり
乳房(乳腺)の発達、肌のハリ、髪のツヤ、膣の潤い。
●女性の健康維持
骨密度を保ち、骨を丈夫にする
善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす。
血管を強くしなやかに保つ。
自律神経を安定させる。
更年期はエストロゲンが下がってくるので、これらに問題が起きます。
エストロゲン値は年齢とともに変化する
(以下すべて佐藤先生)11、12歳頃で初経を迎えるとエストロゲンのレベルがぐっと上がり、30代~40代前半頃までは高い状態が続きます。その後40代半ばになると急激に低下。閉経を迎えると卵巣からはホルモンが出なくなり、その後の人生を過ごしていくことになります。
更年期の症状はいろいろ
更年期症状・更年期障害とは?
更年期症状・更年期障害とは、更年期に現れる多種多様、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とする不定愁訴を主訴とする症状のことです。
更年期の症状
●自律神経失調症状:ホットフラッシュ、発汗
●精神神経症状:抑うつ、イライラ
●その他の症状:肩こり、腰痛、疲れやすい
●骨量減少、骨粗しょう症
●コレステロール・中性脂肪の上昇、動脈硬化
あなたの症状をチェックしてみよう!
更年期の症状を客観的に評価する「簡略更年期指数(SMI)」というものがあります。症状の程度に応じて当てはまるところに〇をつけて、その合計点数で評価。こちらで自分の更年期症状のレベルをチェックしてみましょう。
更年期症状・更年期障害は治療できる
対策はいくつもある
更年期症状・更年期障害の治療法
●ホルモン補充療法
飲み薬や貼り薬、塗り薬で足りないエストロゲンを補う。
ありとあらゆる症状がとにかくつらく、日常生活に支障がある方など。
周閉経期から開始すると効果的。
処方通りの服薬が必要(服薬を忘れがちな人には不向き)。
合併症や既往症によりできない場合あり。
●漢方薬
当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など。
症状はつらいが、ホルモン療法はしたくない方など。
気になり始めた時にいつでも開始、中断・再開が可能。
更年期症状・更年期障害のセルフケア
●食事・運動・休養
三食バランスよく。適度な運動はリラックス効果も。つらい時は無理をしない。
●サプリメント
植物性エストロゲンのイソフラボンを食事やサプリメントで摂取。
薬を使いたくない方、病院に行く時間がない方など。
治療法はタイプに合わせて使い分けていく
ホルモン補充療法は子宮がある場合、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンを使った治療が必要になります。閉経前の方は定期的に子宮の内膜をはがすように周期的に使用。閉経後の方は2種類のホルモンを混ぜた薬を連続使用していきます。一方、子宮がない方はエストロゲンの単独療法になります。
漢方薬も個人の体質・体力などのタイプに合わせて使い分けていきます。例えば冷え性やめまい、肩こりに悩まされている方には当帰芍薬散、イライラして眠れない方には加味逍遥散、のぼせがひどい方には桂枝茯苓丸を選びます。
イソフラボンはそのままでは作用しない
植物性のエストロゲンと言われる大豆イソフラボンですが、大豆イソフラボンを摂取しても効果がある人とない人がいることが分かっています。それは、大豆イソフラボンに含まれているダイゼインが腸内細菌によって代謝され、エクオールに変わることで初めてエストロゲンに似た作用を発揮するからです。内閣府食品安全委員会によると、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量は70~75mg。豆腐や納豆、味噌汁など和食中心の食生活をしているとイソフラボンは摂取できることになりますが、日本人女性のうちエクオールを産生できるのは4割ほど。それ以外の方は大豆製品を食べてもエストロゲンに似た作用は得られないので、セルフケアとしてエクオールのサプリメントで摂取するという選択肢もありますね。
更年期症状の原因はホルモンだけじゃない
更年期に抱える心理的問題
更年期は加齢に伴う容姿の変化や女性らしさの喪失感、老化や病気に対する不安感など、自分自身のことや夫の定年退職、子供の自立、親の死や介護など家族のこと、様々な心理的問題を抱えています。これらが重なることで更年期症状が起きているので、単純にホルモンを補えばいいという話ではありません。
特に深刻な更年期のうつ
実は、更年期症状だと思ってホルモン補充療法で治療しているのに症状が改善しない場合には、隠れうつの可能性もあります。気になる方は自分の心の健康度が分かる「こころの健康チェックシート」をつけてみましょう。16点以上の場合は少し心配な状態なので、かかりつけの先生に相談したり、心のクリニックを受診したり、専門の方に相談してみてください。一番大事なのは一人で悩まないことです。
更年期・老年期に向けて
高コレステロールと骨粗しょう症には要注意!
閉経年齢は今も昔も平均年齢50歳で変わりませんが、現代は人生100年時代。つまり、女性ホルモンレベルがとても低い状態で生活する年数がどんどん増えているということです。更年期初期では、エストロゲンの減少に伴い月経異常やほてりなどの症状が起こり、徐々に今後の生活や命に直結する諸症状が出てくるようになります。
例えば、エストロゲンが減少することでコレステロール値が上昇。動脈硬化が進み心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが上がります。また、エストロゲンは骨を強くする働きもあるので、それが減少すると骨がもろくなり骨粗しょう症のリスクも上がります。70代の女性では50%の方が骨粗しょう症になるというデータもあり、避けては通れない話。今からでも間に合うので、生活習慣を見直したり、骨を強くしたり、将来への貯金をしていきましょう。
まずは産婦人科医に相談を。
更年期は女性のココロとカラダが大きく変わる時期。また、やがて訪れる老年期への準備期間でもあります。心身ともに健康でいられるように、各種検診を受け、迷ったり困ったりすることがあれば、まずは産婦人科医にご相談ください。そして更年期を「幸」年期に!老年期を「朗」年期にしていただきたいと思います。(以上すべて佐藤先生)
参加者の質問に齋藤先生・富田先生・佐藤先生が答える!
【第2部】「女性のヘルスケア~ココロとカラダを健やかに~」
更年期の症状、どう対処したらいいの?
Q顔が赤くなり、熱くなります。寝汗もひどいのですがどうすれば良いでしょうか。(70代)
佐藤先生:更年期を少し超えられた年代の方だと、自律神経が年齢による変化を起こしている場合もあれば、実は持病のお薬でそういう状態になっている可能性もあります。また、どうしてもこの年齢では動脈硬化が進んでくるので、赤ら顔は起こりうるかと思います。
齋藤先生:いわゆるホットフラッシュと言われる更年期の典型的な症状のように思えますが、70代という年齢に少し違和感を覚えますね。佐藤先生がおっしゃる通り、薬の影響や、何か他の病気が隠れている可能性もあります。こういったことは病院に行かないとなかなか分からないので、受診につながるといいですね。
Q更年期障害でホルモン補充療法の貼付剤を使用しています。手の甲の汗がひどく、体中が熱く困っています。薬が効かないイメージですが、他の対処法はありますか?(50代)
佐藤先生:ホルモン補充療法の貼付剤はエストロゲンとプロゲステロン両方の成分が入っているので、ホルモン補充療法されている状態での症状ですね。例えばここに汗を沈めたり、のぼせを改善したりする桂枝茯苓丸などの漢方薬を併用するといいかもしれません。
齋藤先生:どうしても皆さん、ホルモン補充療法の方はホルモン補充療法だけ、漢方薬の方は漢方薬だけ、というイメージになると思いますが、2つの治療体系で治療を進める場合もあります。主治医の先生にも症状をお話しして相談してみてください。
Q更年期症状を自分で軽くする方法はありますか?疲れて、体が動きづらくなることが増えました。(40代)
佐藤先生:私も大いに疲れてダメだなということはあります!体がかたくなってくるとどんどん動けなくなってくるので、ヨガやストレッチなど、自分に合った方法で今日の疲れは今日のうちに取りましょう。また、最近はドラッグストアで手に入る漢方薬もあるので、まずはそれを試してみるのもありだと思います。大豆製品を摂るのもいいですね。さらに、これは家族の協力がいりますが、「お母ちゃん頑張んなくていいよ」と私は声を大にして言います!「自分で自分の仕事を増やさない」「荷下ろしする」という発想の転換も必要ですよ。
Q 更年期の中、妙に落ち込んだり、不眠を感じます。対策方法があれば教えてください。(50代)
佐藤先生:「8時間寝ないと不健康」「〇時に布団に入らないとダメ」という思考を変えましょう。眠気を感じるまで布団に入らないというのも一つの手です。ただし、そうは言っても朝は来るので、睡眠時間が足りないようであれば昼に30分程度の仮眠を取ってみてください。また、うつが隠れていたり、家庭や仕事で不眠のきっかけになる出来事があるのであれば、そこに対処しないと薬を使えばいいという話ではありません。特に我々世代は家庭、職場、親のことも含めて人生がぐちゃぐちゃになる時期なので、なんとか見通しが明るくなるようなことにも取り組みつつ、眠れない時には無理に寝ない!意外と本を読んだりしていると寝落ちできますよ。
齋藤先生:眠れないとお酒を飲む方もいると思います。お酒を飲むと血行がよくなりますが、量が多いとどうしても眠りが浅くなったり、尿意が近くなったりして夜中に起きてしまい、そこから寝つけなくなります。お酒は休肝日を設けて嗜む程度にして、生活サイクルを考えていくのも一つの方法ですね。
これから迎える更年期。今からできることは?
Q 30代後半になり、心身が低調だと感じることが増えました。仕事、子育てで自分の思うように過ごせないストレスもあります。今後起こりうる体調の変化について、備えておくべきこと、心構えなどを教えてください。(30代)
富田先生:心身が低調だと感じる中に大きな病気隠れていることもあります。特に健康診断などを受けていない方で日常生活に支障が出ているならば、現時点で受診を考えてみてください。また、心身の低調が月経周期に伴って起きている場合は、低用量ピルなどで女性ホルモンを一定に保つことで症状が改善されることもあります。40歳頃から徐々にエストロゲンの量が下がり、自律神経が乱れてしまったり、心身の不調が出やすくなったりするので、女性ホルモンを整える治療を考えるのも選択肢の一つですね。
齋藤先生:富田先生のお話しで、一つ大きなポイントがありました。健康診断ですね。実は、会社の検診で行っている採血項目で病気が見つかることが多々あります。また、市町村で行っている子宮がん検診で初めて卵巣の腫瘍を指摘される方もいます。やはり定期的な検診を受けることは非常に大切ですね。
Q 40歳を過ぎたら体が変化するとよく聞きますが、変化を緩やかに感じるために日々の生活で心がけた方がいいことはありますか。現在41歳、今から間に合うことがあれば知りたいです。(40代)
富田先生: 一つは、生活リズムを一定にすることが効果的です。また、体重も変化しやすい時期になってくるので、体重管理に努めてください。さらに、運動習慣がいいとも言われています。しっかりとした生活リズムで運動習慣を身につけて、ご自身の体重管理に気を付けると、更年期に向かう不安定な時期を乗り切れると思います。
これって更年期?自分ではよく分かりません
Q 更年期の症状と他の病気との見極め方について教えてください。(50代)
佐藤先生:まずは婦人科にお越しください。そこで簡略更年期指数などをつけてお話をお伺いした上で、漢方薬やホルモン補充療法など、何らかのお薬を入れてみます。それでその症状が楽になったら更年期に伴う症状だと考えることができますし、あまり良くならない場合は、心療内科や精神科、整形外科に行きましょうか?あるいは甲状腺を調べてみましょうか?という個別対応になってきます。まずはお悩みがあればどうぞ婦人科にいらしてください。そこで一緒に考えていきましょう。
齋藤先生:最初から大きな病院に行く必要はありません。近くの内科や婦人科の先生、今までがん検診を受けてきた病院でもいいです。受診をしないことには始まらないので、気軽に受診してみてください。
Q 閉経後にリスクが高まる病気や現れる症状はありますか?(50代)
佐藤先生:動脈硬化、それからコレステロールが変動してくるので心筋梗塞や狭心症、高血圧、骨粗しょう症のリスクが高まります。もし家に血圧計があれば毎日測ってみてください。おそらく40代後半からベースの血圧が上がってくると思います。とても大事なサインなので、血圧を見ていくだけでも心筋梗塞や脳血管疾患のリスクの程度が分かります。また、50~60代から子宮体がんも増えてくるので、婦人科の検診を欠かさないでください。さらに、エストロゲンは大腸がんのリスクを下げます。言いかえれば、女性は閉経とともに大腸がんのリスクが上がるということ。そこで40歳を過ぎたら、1回は大腸の内視鏡検査を受けてください。健康診断のお通じの潜血検査よりも情報量が多いので、ポリープ腺腫や初期のがんが見つかることもあります。更年期を機に、自分の一斉点検をしてみるといいですね。
Q更年期障害だと思っていたら、癌の初期症状だったという話を聞いたことがあります。どこまでが更年期と判断したら良いのでしょうか。(40代)
佐藤先生:判断するのは我々です。婦人科に来てください。以上です!
齋藤先生:非常に明確なメッセージですね。皆さんどうしても自分で判断しがちですが、そこの判断や診断は我々に任せてください。何か気になることがあったら受診する、と考えてくださいね。
Q 更年期の症状がどの程度までひどくなったら病院を受診したらよいでしょうか。(50代)
佐藤先生:待ち時間の問題もあると思います。また、「こんな症状で病院に行ったら嫌がられるかも…」と思うかもしれません。でもいいんです!症状が「ひどい」「ひどくない」というのは人それぞれなので、婦人科でもかかりつけの先生でもいいので、まずは相談してください。一緒に考えていきましょう。
様々な更年期の症状。何科を受診したらいいの?
Q最近肩こりがひどくなり、肘の関節の痛みも続いています。更年期の症状と自己判断し、我慢していますが、このまま病院に行かないのも怖いです。整形外科または婦人科のどちらかを受診するべきですか?(40代)
佐藤先生:整形外科に行かれるのもいいチョイスですが、まずは婦人科にいらしてください。また、「日本手外科学会」というものがあります。こちらは整形外科の中でも手の専門医。指が変形した場合には手術までできる手のスペシャリストです。もし手先や手首が痛む場合は、宮城県内にも手外科の先生が複数名いるので、そちらを訪ねてもいいですね。
Q 橋本病について知りたいです。また、ヘバーデン結節にエクオールは効きますか?また、女性に多い理由を知りたいです。(50代)
佐藤先生:橋本病とは甲状腺に炎症が起きる疾患です。だいたい女性の10人に1人にみられ、40人に1人は甲状腺ホルモンが少ない状態になってしまいます。甲状腺ホルモンは元気活発ホルモンなので、それが減ると「だるい」「やる気が出ない」など、更年期によく似た症状が出てきます。甲状腺ホルモンの数値が下がっている場合は、漢方や女性ホルモンの補充ではなく、甲状腺ホルモンを補うことで症状が改善するので、もしだるさが続く場合は受診の際に「甲状腺のホルモンを調べていただくことはできますか?」と一言付け加えると、解決の早道になるかもしれません。
ヘバーデン結節は、指の第1関節が盛り上がったり曲がったりする疾患です。女性に多い理由は、エストロゲンは関節のしなやかさ、柔らかさにも関係してくるから。もちろん女性ホルモンを補えば効果はありますが、エクオールにも似たような作用があるので痛みが和らぐ可能性はあります。ただし、1度変形した関節を元通りに戻す効果は女性ホルモンにもエクオールにもないので、手術的な治療は先ほどお話しした手外科の先生にご相談ください。今の症状を悪化させないために、豆腐や納豆をたくさん食べたり、セルフケアとしてエクオールを飲んだりするのは悪い話ではありませんよ。
月経に関する様々な症状について
Q 年々、生理痛がひどくなる気がします。閉経と生理痛についての仕組みを詳しく教えてください。(40代)
富田先生:エストロゲンは急になくなるわけではなく、年とともにだんだん低下していきます。生理はエストロゲンとプロゲステロン、2つのホルモンの微妙な作用で生じているので、どうしても40代に入りエストロゲンが減ってくると、毎月の生理が少なく終わることもあれば、ドンと多くなってしまうこともあるんですね。その多くなった時にたくさんの血液を押し出そうとするので、生理痛がひどくなることがあります。これについては低用量ピルやホルモンバランスを整える治療で改善することが多いので、ぜひ婦人科にご相談ください。
また、40代の方は他の婦人科疾患を持っている方も多くいます。特にだんだんひどくなる生理痛は、子宮筋腫や卵巣子宮内膜症性嚢胞などの病気が隠れていることが多いので、それらを見つける意味でもまずは婦人科にご相談いただけるといいですね。
齋藤先生:月経痛には慣れが生じてしまうことがあります。「先月と同じだから大丈夫」「痛み止めを飲めば良くなるから放っておこう」という方もいますが、痛みとお腹の中の状態がリンクしないという場合もあるんです。そういう意味でも、やはり婦人科の受診をしていただくことは大切ですね。
Q PMS症状の頭痛で貧血は起こるのでしょうか?また腹痛や頭痛は生理後にも起こるのでしょうか?(40代)
富田先生:PMS(月経前症候群)は、月経前にエストロゲンとプロゲステロンが下がることにより、精神的・肉体的な症状が出てくるものです。私もそうですが、月経前に頭痛を経験される方は多いのではないでしょうか?これも女性ホルモンの作用で起きている場合があります。一方、貧血自体はPMSの症状ではありませんが、貧血と同じようなふらつきはPMSの症状として起こることがあります。これは女性ホルモンを整えることで改善することが多いので、セルフケアとしては生活リズムを整えること。治療としては、低用量ピルでホルモンを一定にすることで改善が期待できます。
また、腹痛頭痛は生理後に起こる方もいます。特に子宮筋腫や卵巣内膜症性嚢胞、子宮腺筋症などを持っていると、生理前・生理中・生理後の腹痛頭痛の症状が強くなることがあるので、そういった症状がある時は一度婦人科の診察を受けてください。
まとめ
普段なかなか女性のカラダについてここまで幅広く深くお話を聞くことはないので、とても貴重な時間でした。「セルフケアや治療で症状は緩和できる」「がまんや自己判断をせずにまずは受診をすること」。先生方のお話しから、自分のカラダとココロへの向き合い方のヒントが見つかった気がします。何か気になることや少しでも不安な症状がある場合は、気軽に相談できる“かかりつけ医”を見つけておきたいですね。
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※このページの情報は2024年11月29日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】