知っているようで、ちゃんと知らない。聞きたくても、人には聞けない。女性ならではの不調や不安について、東北大学の八重樫先生率いるドクター陣が解説!
こんにちは。東北大学の八重樫です。前回は乳がんの予防とセルフチェックの大切さをお伝えしました。今回は乳がんの検診と治療について、東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学分野の石田教授に教えていただきます。乳がんは、日本人女性に最も増加しているがん。初期に発見できれば多くの場合は助かりますが、検診受診率が全国で40%しかないのが問題です。必ず検診を受ける社会にし、乳がんの予防と早期発見に務めましょう。
教えてくれたのは
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
婦人科学分野 教授
八重樫伸生先生
東北大学大学院医学系研究科
乳腺・内分泌外科学分野 教授
石田孝宣先生
乳がんにまつわる最新の研究
「乳がん」とは、乳腺の細胞からできるがんです。乳腺は、母乳の通り道である乳管と、母乳の製造場所である小葉を合わせたもの。乳頭には乳管が15〜20ほど集まっていて、その枝分かれした先にあるのが小葉というブドウの房のような組織です。乳がんの約9割は乳管の上皮細胞から発生し、小葉を出てすぐの場所にできるケースが多いとわかっています。
知っておこう!胸の構造と乳がんができる場所
乳がんは日本人女性が最も多くかかる悪性腫瘍であり、30歳〜64歳のがん臓器別死亡原因の第1位。しかし、乳がんに対する遺伝子解析や新規薬物療法の開発によって、命に与える影響は改善しています。また、予防の研究も進んでいます。閉経後の肥満を避けることが極めて重要であることが明らかになっていますし、適度な運動や大豆イソフラボンの適量摂取も予防のために可能性があるとされています。一方で、早期発見が果たす役割はやはり大きく、乳がん検診を受けること、自分の乳房に関心を持つ生活習慣が何よりも大切です。
胸にしこりを感じたら…
痛みを伴う乳がんは、乳がん全体のごく一部ですので、乳房の痛みを過度に心配する必要はありません。しかし、痛みがないからと、しこりを自覚しても受診しないケースがあります。乳腺にできる腫瘍には良性のものも多くありますから、乳腺の専門医に良性か悪性かを区別してもらいましょう。資格を有する専門医・指導医は、日本乳癌学会のホームページで地域ごとに掲示されています。確認してから受診しましょう。専門医を受診すべきかどうか迷うときには、産婦人科医に相談してください。
検診と死亡率の関係
検診の受診率が40%程度の日本では、乳がんの死亡率は増加傾向にあります。一方、検診の受診率が70%以上の欧米では、乳がんの死亡率は減少傾向に転じています。このデータからも、検診による早期発見がいかに重要なのかがわかりますね。そうしたなかで、全国的にみても検診の先進地域である宮城県は、県民の乳がん検診受診率が約60%に達しています。県ではさらに10%の上乗せを行い、70%を目標に掲げています。
乳がん検診でわかること
乳がん検診は、市町村が主体で行うものと、個人や職場の福利厚生で行うものがあり、目的に沿って選択することが可能です。乳がんの検診や診断には、マンモグラフィ(X線撮影)と超音波による検査があります。さらに詳しい情報が必要と判断される場合は、組織や細胞を採取して診断。特に組織の検査では、乳がんであるかどうかに加えて、乳がんの場合はその性格も評価することができます。乳がんの診断で重要なのは進行度と、サブタイプと呼ばれる乳がんの性格による分類。これらによって治療方法や治療の順序が異なるため、とても重要な情報となります。
治療による副作用が心配…
抗がん剤による吐き気や脱毛を心配される人が多いと思います。吐き気に関しては、予防する制吐剤が進歩し、現在では発生する頻度や程度がずいぶん少なくなっています。一方、脱毛に関しては、頭皮を冷却する装置などが開発されていますが、制御はなかなか困難な状況です。そのほかでは、手足のしびれや心臓、肺、肝臓、腎臓の機能に影響する薬剤もありますので、それぞれの薬剤の特徴を踏まえて主治医の先生と相談しましょう。
また、ホルモン療法を用いる場合は、閉経の有無やがんの状況によって薬剤が選択されます。基本的には女性ホルモンを抑える治療となりますので、ホットフラッシュなどの更年期障害や関節の痛みなどが出現するケースがあります。これらの症状を緩和する目的で、漢方が選択される場合も少なくありません。
また、ホルモン療法を用いる場合は、閉経の有無やがんの状況によって薬剤が選択されます。基本的には女性ホルモンを抑える治療となりますので、ホットフラッシュなどの更年期障害や関節の痛みなどが出現するケースがあります。これらの症状を緩和する目的で、漢方が選択される場合も少なくありません。
ブレスト・アウェアネスを心がけよう!
自分の乳房を意識する生活習慣を「ブレスト・アウェアネス」といいます。
・普段から乳房を見る、さわる、感じる。
・乳房の変化に気をつける。
・乳房のいつもの状態と、月経周期に伴う変化をそれぞれ知っておく。
ブレスト・アウェアネスを心がけながら、変化がなければ、定期的に乳がん検診を受けましょう。もし、いつもとは違う変化に気づいたら、乳がん検診を待たずに専門医や産婦人科医を受診してください。
乳がんは、自分で発見できるがん
乳房は体表の臓器であることから、乳がんは自分で発見できる数少ないがんの一つです。月1回のセルフチェックとあわせて、今日からブレスト・アウェアネスをはじめましょう。(石田先生)
大人女子の取扱POINT
myベストパートナーになってくれる「かかりつけ医」を持とう!
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※このページの情報は2021年12月21日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】