知っているようで、ちゃんと知らない。聞きたくても、人には聞けない。女性ならではの不調や不安について、東北大学の八重樫先生率いるドクター陣が解説!
こんにちは。東北大学の八重樫です。今回のテーマは「女性ホルモンと更年期障害」。中高年女性の多くは、月経異常から始まり、ホットフラッシュ、うつ状態や不眠、尿失禁など、さまざまな不定愁訴に悩まされます。これらは女性ホルモンを正しく理解することで、より快適な毎日を送れるようになります。前回に続いて、東北大学病院 周産母子センター講師、婦人科外来医長の渡邉先生に詳しく教えてもらいましょう。
教えてくれたのは
東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
婦人科学分野 教授
八重樫伸生先生
東北大学病院
周産母子センター講師 婦人科外来医長
渡邉 善先生
症状があったら、我慢せずに受診を
更年期障害のなかでも、月経不順や不正性器出血などの婦人科症状は早期にあらわれます。その後に起こりうる更年期障害に備える意味でも、月経に関連する症状があったら、産婦人科を受診するのが良いと思います。月経異常のほかにも多く見られる早期の自覚症状としては、のぼせ、発汗、動悸などがあります。最初は我慢できても、徐々に日常生活に支障が出てくる可能性もあるため、そのような症状を感じたら、我慢せず受診してください。
どの診療科を受診すれば良い?
「更年期障害かも?」でもよくわからないようなら、まずは産婦人科を受診することをおすすめします。ただし、最も困っている症状に応じて、受診する診療科を選ぶことも良いと思います。たとえば、動悸、息切れや消化器症状がメインなら内科へ。腰痛、関節痛、しびれなどが重いときは整形外科へ。抑うつや不安などの精神症状がつらいと感じたら精神科へ。頻尿や失禁などは泌尿器科へ、といったように。
更年期世代をトータルでケアする産婦人科
更年期障害の診察においては、問診が最も重要だと考えています。更年期障害は不定愁訴といわれるくらい、患者さんの訴えが多岐にわたります。人によって感じ方や生活への影響も異なるため、ご本人が症状をどのように理解しているか、何に困っているか、どのような生活を目指したいかなど、更年期障害の症状への向き合い方を一緒に考えていくことが何より大事に。一方で、何かほかの病気が隠れていないか、その可能性について考慮することも、重要であると考えています。診察ではまず、十分な問診と除外診断を行い、生活習慣の改善とともに行動療法や心理療法などを試みます。改善しない、もしくは見込めない場合には、薬物療法の導入を検討します。
産婦人科での一般的な治療
更年期障害の原因であるエストロゲン分泌の不安定さおよび欠乏に対して、根本的な効果を期待する場合には、少量のエストロゲンを補充するホルモン補充療法が選択されます。特にホットフラッシュや発汗などに有効ですが、そのほか、高コレステロール血症の改善、抑うつの軽減、腟粘膜の萎縮による泌尿生殖器症状の改善、骨粗しょう症の予防なども期待できます。そのほか、各症状に対して改善を期待する対症療法もあり、漢方薬や向精神薬がよく使用されます。漢方薬は多くの種類で更年期障害に適応があり、単独もしくは組み合わせによって多様な症状に対応できます。向精神薬は日常生活への影響が大きい精神症状に対して緩和が期待できるといわれています。
セルフケアとして、ハーブやサプリという選択も
肥満や睡眠不足などは、更年期障害と関連します。高カロリー、高塩分の食事を避ける、定期的な運動をする、十分な睡眠をとるなど、生活習慣を見直すことが更年期障害の予防にもつながります。また、比較的安全で日常的に摂取できる何種類かのハーブ(セージ、レモンバームなど)のほか、女性ホルモンと似た働きをするエクオールも更年期世代によくみられる症状を緩和するという報告があり、セルフケアとして注目されています。エクオールは大豆由来成分で、サプリメントで補うことができます。詳しくは主治医の先生と相談してください。
更年期と上手に付き合う秘訣
一番大事なことは、ストレスをためすぎないこと。日本の女性は忍耐強く、ストレスをため込みやすい傾向にあります。さらに、更年期を迎えた女性の中には、家庭内では育児や介護の中心的立場にあったり、仕事では責任を求められる立場であったりする人もいるでしょう。心身にストレスがかかった状態でいると、女性ホルモンにも影響し、更年期障害の症状を助長してしまいます。普段の生活からストレスをためすぎない工夫をして、更年期をうまく乗り切っていきましょう。(渡邉先生)
大人女子の取扱POINT
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※このページの情報は2021年10月26日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】