「これって、私だけ?」「人には相談しづらい…」。女性ならではの疑問や本音について、気軽に、話し合える場所があったら。そんな思いから、“カラダ本音カフェ”を開催! 女性のカラダの専門家である東北大学病院 産婦人科の志賀尚美先生を迎え、「PMS(月経前症候群)」をテーマに座談会を行いました。
教えてくれたのは
東北大学病院
周産母子センター
志賀尚美先生
参加者
(左から) 有川由紀さん(40代) / 清水優衣さん(30代) / 高木理美さん(30代)
・月経前の3日〜10日の間にカラダや心に起こる症状。月経が始まるとやわらぐ。
・精神的症状はイライラ、憂うつ、不安、混乱した気分など。身体的症状は乳房の張りや痛み、腹痛、手足のむくみ、頭痛など。
・精神的症状が主体で強い場合は、PMDD(月経前不快気分障害)。
志賀先生によれば、95%の女性が月経前に何らかの症状を経験!(※1) さらに、女子学生の12%(約10人に1人)が月経前症状で学校を欠席したことがある(※2)そうです。皆さんはどうですか? 座談会ではまず、参加者同士で月経前に感じていることをシェア。それらが起こるメカニズムについて、志賀先生に解説していただきました。
※1:20歳〜49歳の女性1,152名にアンケートを実施。Takeda T, et al. 2006
※2:Tadakawa M, et al. 2016
月経に伴うホルモンの波は、まるでジェットコースター
有川さん:月経が近くなると、理由もなくイライラしてしまいます。
志賀先生:PMSの原因はまだはっきりとわかっていないのですが、月経前の3日〜10日は黄体期の後半で、卵胞ホルモン「エストロゲン」と黄体ホルモン「プロゲステロン」が急速に低下する時期。この2つの女性ホルモンが精神を安定させる脳内物質セロトニンなどに影響を与えているため、イライラや気分の落ち込み、不安、過食などが起こりやすくなると言われています。
高木さん:私は気分が落ち込むだけではなく、月経前はカラダが重く、疲れやすいと感じます。
志賀先生:プロゲステロンの影響でカラダの中に水分を溜め込みやすくなるため、尿が出づらく、むくみや体重増加が起こりやすくなります。カラダがむくむと、精神症状がより強く出るという報告も。また、腸の運動が低下し、便秘やお腹の張りを感じる人もいます。
清水さん:仕事中でも眠くなってしまうので困ります。
志賀先生:月経前はホルモンの影響で基礎体温が上がり、体温の日内変動が少なくなります。そうなると、睡眠と覚醒のメリハリがなくなり、日中に眠くなってしまうのです。
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このように、女性は常にエストロゲンとプロゲステロンの波に影響を受けています。皆さんが感じているPMSの症状は、女性ホルモンのせいと言っても過言ではありません。加えてストレスや性格も影響しており、几帳面で真面目な人は発症させやすいと言われています。女性ホルモンの波をわかりやすく例えるなら、ジェットコースター。ジェットコースターが好きな人もいれば、苦手な人もいますよね。女性ホルモンの波も、人によって得意・不得意があります。PMSにはさまざまな症状があり、程度や感じ方に個人差があるのはそのためです。
症状日記・生活改善・食事の見直しで、月経前を快適に!
●症状日記をつける
セルフケアの第一歩は、自分の状態を正しく把握すること。
・どのような症状がある?
・どれぐらいの頻度で起こる?(毎月または2、3カ月に1回など)
・月経周期のいつから起こる?
・日常生活にどんな支障がある?
スマホのカレンダーや月経管理アプリを活用して、記録してみましょう。
●規則正しい睡眠を心がける
睡眠の重要性はよく言われることですが、PMSのケアにおいても同様です。普段から睡眠と覚醒のメリハリがきちんとあると、眠気対策にもつながります。
●禁煙する
喫煙はPMSのリスクを上げます。たばこを吸う人は禁煙をしましょう。
●運動する
ヨガや水泳は、PMSの症状をやわらげるというエビデンスがあります。それ以外にも、運動すると高揚を感じる脳内物質が出ると言われておりますので、精神症状のケアとして適度な運動を習慣づけたいです。
●食生活を見直す
以下は、PMSの症状をやわらげるのに役立つと期待されている成分です。普段の食事に取り入れてみてください。
ビタミンB6(マグロ、カツオ、バナナなど)
オメガ3脂肪酸(サーモン、サンマなど)
ビタミンE(アーモンド、大豆、カボチャなど)
ビタミンD(魚類、きのこなど)
マグネシウム(カシューナッツ、ごま、海藻、豆類など)
カルシウム(乳製品、豆類など)
大豆は積極的にとりたい食品
豆類のなかでも特に大豆はさまざまな栄養素を含む優秀な食品で、大豆油にはビタミンEの一種「γ-トコフェロール」が含まれています。米油に含まれる「γ-トコトリエノール」とともに、体内でナトリウム利尿作用を持つ成分に変わり、月経前のむくみやむくみに伴う精神症状をやわらげる効果が期待できます。さらに、大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできる「エクオール」には、エストロゲンに似た作用があり、月経がある女性のエストロゲンを調整する働きが期待できます。
PMSの人はカルシウムが不足しやすい
カルシウムが不足すると、不安や抑うつの症状が出やすくなります。カルシウムをとることで、精神症状が緩和するといった報告も。
紹介した成分をバランス良くとるのが理想的ですが、日々の食事ではなかなか難しいかもしれません。セルフケアとして月経前の1週間くらいは、不足しがちな成分をサプリメントで摂取するのも一つの方法です。
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清水さん:月経前は甘いものを食べたくなり、体重が増えてしまうのが悩みでした。これからは、アーモンドやカシューナッツをおやつがわりに食べてみようと思います。
PMSは自然な現象。我慢せずに周囲や医療を頼って
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高木さん:そもそも、PMSはカラダにとって必要なのでしょうか?志賀先生:気分が落ち込む、動きたくないなど、PMSは内にこもるような症状が多いですよね。それは、妊娠が成立したときのために、安静に過ごせるようにとカラダに備わったものなのではないか?とも考えられているんです。
清水さん:月経前になると些細なことでイライラしてしまい、1歳の息子に当たってしまいます。息子に申し訳なくて、ダメな母親だなと罪悪感を感じます。
有川さん:私も息子がいるので、わかります。最近は正直に、「そろそろ生理が始まるから、ちょっとイライラするかもしれないよ」って伝えるようにしています。
高木さん:素敵な心がけですね。異性に理解してもらうのは難しいですが、幼少期から「女性ってそういうものだよ」と教えていけば、息子さんが大人になったときにパートナーのことも理解してあげられますね。
志賀先生:PMSとうまく付き合うためには、まさに周囲の理解と支えが不可欠です。月経前の不調は女性の生理的な症状であり、卵巣が正常に働いているからこそ起こるもの。「自然なことなんだ」という認識を持っていただき、周囲の人にも理解してもらいましょう。そのうえで、「今は月経前で調子が悪いから、こうしてほしい」など、具体的に伝えてみると、相手もサポートしやすいはず。辛いときには我慢しないで、医療にも頼ってほしいです。
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有川さん:産婦人科は妊娠・出産のときにお世話になる場所、というイメージしかありませんでした。でも、志賀先生とお話をしてみて、妊娠・出産以外でも気軽に相談していいんだ!と身近に感じられました。対処法もわかり、勉強になりました。志賀先生:産婦人科は敷居が高いと思っている人も多いようで、少し寂しいのですが…。そんなことはないんですよ。遠慮せずに産婦人科に相談してください。PMSの治療には低用量ピルや抗うつ薬、漢方薬による薬物療法などがあり、その人に合わせた治療法を選択します。心の症状が強いなと感じる場合には、心療内科や精神科を受診していただくのも良いと思います。日常生活に支障があると感じたら、受診のタイミングです。
座談会を終えて
myベストパートナーになってくれる「かかりつけ医」を持とう!
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※このページの情報は2023年6月22日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】