仙台パン図鑑 vol.73 「パン・菓子工房oui」~南三陸の里山に馴染む、小さなパン工房~

仙台をはじめ県内のおいしいパン屋さんをじっくりめぐっていく「仙台パン図鑑」。第73回は、南三陸町の里山にある「パン・菓子工房oui(ウィ)」へ。オープン9年目ながらずっとそこにあったかのような佇まいを見せる、南三陸杉を使って建てられたパン小屋。地域の常連さんはもちろん、遠くから足を運ぶファンも多い小さなパン工房です。

地域のおいしいものを詰め込んだ、体想いのパン。

志津川ICを山手に進むと見えてくる、かわいらしい「パン」ののぼり。少々きつめの坂を上ったところに建つのが「oui」です。地域に暮らす女性たちのチャレンジを応援するシェア工房として2017年にオープン。主に金・土曜は「oui」の営業日としてパンを販売しています。なるべく地域にあるものを使い、ないものはつながりのあるところの素材を加えてつくるのが「oui」のパン。小麦は岩手と北海道産に加えて工房前に広がる麦畑で育てたものを、酵母はホシノ天然酵母と地域で育った果実由来の自家製酵母を使っています。

小さな工房なので暖簾をくぐるのは1組ずつ。木製のショーケースには、カゴやトレイに盛られた約20種類のパンと焼菓子が少し。ハード系から菓子パン、総菜パンまでバランスよく並んでいます。バゲットやカンパーニュなどは地域の方の好みに合わせてハード過ぎず食べやすい食感に。ジャムやカレーなどの具材もすべて工房で仕込み、体にやさしく味わい深いパンを焼きあげています。はじめはこだわりを伝えるのが難しかったという「oui」のパンも、今や9年目。取材中も週2回の営業日を心待ちにしていたお客さんが次々と訪れていました。

「oui」おすすめパンカタログ

国産小麦とホシノ天然酵母、塩、砂糖のシンプルな組み合わせで大人気の「食パン」(1斤・420円)。耳までもっちりとした食感で、小麦の味が感じられる山食パンです。少し厚めにスライスしてトーストするのはもちろん、薄切りにしてサンドイッチにするのもおすすめ。素材がシンプルなので、どんな具材にもマッチします。

歯切れのいいフランスパン生地でキーマカレーを包んだ食べごたえのある「カレーパン」(250円)。自家製のキーマカレーには、鶏ひき肉と主に地域で採れた季節野菜がたっぷり!スパイスが効いていますが、野菜の甘みがあるので辛さは控えめ。揚げずに焼いているので油っぽくないのもうれしいポイントです。

「クロワッサン」(220円)は、工房前の麦畑で育てた小麦や小麦ふすま入り。香ばしく、ほんのりと甘みが感じられるのが特徴です。よつ葉バターをたっぷり使い、生地は丁寧に手折り。機械では再現できないサクッと歯切れのいい食感を生み出しています。酵母はイチジクやくわの実など季節によって変わるので、その時期だけの味わいをお楽しみに。

3種のレーズン入りの「レーズンブレッド」(ホール・480円、ハーフ・240円)。噛むほどに小麦の旨みとジュワッと染み出るレーズンの甘みが感じられる、リッチな一品です。全粒粉や小麦ふすまを加えて香ばしく焼き上げたハード系ですが、ややソフトで食べやすい食感。一本まるごと食べたくなるおいしさですが、厚めにカットして少しずつどうぞ。

「oui」のパンは、工房のある南三陸まで来られないお客さんのために、オンラインショップで購入することもできます。でも一度はぜひ現地へ!春には工房入り口の桜が咲き、夏には麦畑が一面黄金色になる季節を迎えます。「くわ茶ベーグル」や「季節のカンパーニュ」など、季節限定商品も登場するのでお楽しみに。

【パン語解説】
取材中に登場した、知っているようでうまく説明できないパンの専門用語をざっくり解説します。

●小麦ふすま
小麦の外側の表皮部分のことで、「小麦ブラン」とも呼ばれます。実は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどがたっぷり含まれている栄養価の高い食材。通常は小麦粉を製粉する過程で廃棄される部分ですが、「oui」では、パンや焼菓子に少量混ぜることで香ばしさをアップ!工房前で育った小麦を余すことなく味わえます。

パン・菓子工房oui

住所/本吉郡南三陸町入谷字桜沢421-1
電話番号/090-6065-1517
営業時間/11:00~15:00、土曜10:00~14:00
営業日/金・土曜
Instagram/@pankashikoubou_oui

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佐々木綾

宮城県仙台市出身。仙台市内の出版社勤務を経て、2007年よりフリーランスのライター・エディターとして活動をスタート。雑誌・フリーペーパー・WEBマガジン等の取材・ライティング・編集を担当。

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