「これって、私だけ?」「人には相談しづらい…」。女性ならではの疑問や本音について、カフェのような空間でリラックスしながら語り合う〝カラダ本音カフェ“。4回目となる今回は、東北大学病院 産婦人科の横山絵美先生にお越しいただき、「更年期」をテーマに開催しました。
教えてくれたのは
東北大学病院
産婦人科
横山絵美先生
参加者
(左から)藤田尚子さん、杉山千穂さん、隅田 慈さん(30代~40代)
更年期
・閉経の前後5年間(計10年間)にあたる、女性特有のライフステージ。この時期に起こる身体的・精神的な症状が「更年期症状」。
・日本人女性の更年期症状は、肩こり、疲れやすい、のぼせ、頭痛、腰痛、発汗など、さまざま。
・薬物治療やセルフケアで、更年期症状の緩和が期待できる。
座談会ではまず、それぞれの更年期症状をチェック!まだ少し先のことだと思っていた参加者も、気になる項目がいくつか…。更年期症状が本格的に表れはじめた時の不安を少しでもなくすために、治療法や対処法について横山先生に解説していただきました。
更年期の症状の原因は、エストロゲンの低下と環境の変化
横山先生:更年期とは、閉経の前後5年間のことを指します。計10年間なのでけっこう長い期間ですよね。女性は、40歳を超えると女性ホルモンのエストロゲン分泌が急激に減っていきます。
また、加齢によって体の変化、体力・気力の低下なども起こります。年齢とともに責任のある仕事が増える時期にさしかかり、身近な人が亡くなることが多くなり人間関係の喪失感を感じやすい時期でもあります。両親の介護や子どもの自立も重なり、悩みも抱えがち。
エストロゲンの低下によりホルモンバランスが崩れ、そこに更年期というライフステージ特有の背景が加わることで、体や心にさまざまな症状が起こりやすくなります。
当てはまる症状がないか、セルフチェックをしてみましょう!
更年期症状にはどのようなものがあるのでしょうか。以下は、更年期に起こる症状をまとめた表です。それぞれの程度を「なし」「弱」「中」「強」の4段階でチェックし、合計点数から更年期症状の程度を判断します。
小山嵩夫ら、簡略更年期指数(SMI)1992
採点結果
0~25点:更年期を上手に過ごせています。このままの生活を続けていきましょう。
26~50点:食事や運動などの生活習慣に気をつけて、無理のない生活を送りましょう。
51~65点:婦人科または更年期・閉経外来を受診し、医師の診察を受けた方がいいでしょう。
66~80点:半年以上の長期間にわたる計画的な治療が必要です。
81~100点:各科の精密検査を受け、その結果に基づいた長期的な対応が必要です。
杉山さん:「弱」ですが当てはまる項目がけっこうありました。たまに本当に何をしても寝られないことがあるので、寝つきの悪さが気になりますね。これも更年期のはじまりの合図なのでしょうか?
藤田さん:私は若い頃「弱」だったものが、「中」や「強」になっている気がします。採点結果も高めでした。特に動悸や憂うつがひどく、自分ではどうすればいいか分からなくて…。
隅田さん:汗のかきやすさや手足の冷えは、20代の頃から感じていました。肩こり、腰痛なども慢性的にあるので、この先症状がひどくならないといいな…と思いました。
横山先生:更年期症状と間違いやすい病気もあります。例えば頭痛なら脳腫瘍や眼・鼻・耳の病気、肩こり・めまい・耳鳴りは高血圧や脳梗塞、メニエール病などからくることもあります。
また、もちろん合計点数や診断結果がすべてではなく、あくまでも目安です。受診を検討した方がいいのは51点以上の方ですが、点数が低かったから問題ないかというと、そういうわけではありません。普段から健康や生活に気をつけることが大切です。
更年期症状は治療できる!
横山先生:更年期は女性なら誰もが経験するステージですが、症状がつらいのにガマンをする必要はありません。薬による治療やセルフケアなど、さまざまな対処法があります。
更年期症状の薬物療法
・ホルモン補充療法(ほてり・発汗など体の症状に対して有効)
・向精神薬(精神的な症状に有効)
・漢方薬(症状に合わせて組み合わせられる)
杉山さん:以前、月経痛がひどい時に当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)という漢方薬を処方していただいたことがあります。漢方薬は安心感がありましたね。
横山先生:漢方薬は更年期のさまざまな症状に合わせて心の症状を改善するのが得意で、副作用も比較的少ない薬です。ホルモン補充療法も安心して使える治療ですが、漢方薬は薬局でも簡単に手に入るので取り入れやすいですよね。
環境整備に生活改善。セルフケアも大切です
薬を使った治療のほかにセルフケアもあります。まずは自分の環境を自分で整える環境整備を心掛けましょう。まずは、まわりの人に無理のない範囲で自分の状況を伝えて理解してもらうことが大切です。また、同じ悩みを持つ友人と体や心のつらさを共有すると、気持ちが楽になるかもしれません。「自分でなんとかしないと!」と抱え込むのではなく、信頼できるかかりつけ医を見つけ、医療もうまく頼ってください。
セルフケアとしては生活改善も大切です。みなさん運動習慣はありますか?
杉山さん:毎朝5分程度、動画を見ながら筋トレや体幹トレーニングをしています。習慣になっているので逆にやらない方が気持ち悪いぐらいです。
藤田さん:1カ月ほど前からジムに通うことにしました。最低でも週3回は通っていて、だいぶ疲れがたまらない体になってきているのを実感しています。
隅田さん:特定の運動はしていませんが、もともと歩くのが好きなので、エスカレーターを使わずに階段を上ったり、一駅分歩いたりしています。
横山先生:更年期の女性で運動習慣があるのは2割程度と言われています。ウォーキングやヨガ、水泳などの有酸素運動が効果的なので、ぜひ自分に合った運動方法を選んで続けてみてください。
運動以外の生活改善としては、食生活が重要です。更年期になると基礎代謝量が低下し、エストロゲンの低下にともない脂質代謝や骨代謝の変化も起こります。さまざまな栄養素をバランスよく摂取するよう心掛けてください。
更年期に摂取したい栄養成分
・ビタミンB(豚肉、レバー、豆類など)…ストレスや不安を軽減
・マグネシウム(ごま、豆類など)…ストレスや不安を軽減
・ビタミンE(アーモンド、かぼちゃなど)…脂質代謝を改善
・ビタミンD(魚類、きのこなど)…骨代謝を改善
・エクオール※(大豆など)…更年期症状を緩和
※エクオールとは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできる成分。エストロゲンに似た作用があります。
横山先生:特に、更年期症状の緩和が期待できるエクオールには注目したいですね。ただし、日本人女性のうちエクオールを産生できるのは2人に1人。エクオール産生菌がない場合は、大豆を食べてもエストロゲンに似た作用は得られないことが分かっています。
エクオールは首や肩のコリを緩和したり、ホットフラッシュの頻度を減らしたりするだけでなく、骨密度低下をおさえたり、目じりのシワ面積の広がりを抑えたり、さまざまな効果が期待できます。
和食中心の生活を心掛けていれば無理なく大豆イソフラボンを摂取することはできますが、エクオールを産生できない方もいるので、サプリメントで摂取するのも選択肢の一つですね。
更年期のセルフケアPOINT
・相談できる相手を見つける→家族、同じ悩みを持つ友人、かかりつけ医を味方に!
・運動を継続する→自分に合った運動方法を見つけよう!
・バランスのよい食事を心がける→不足しがちな栄養成分はサプリメントで摂取!
更年期のセルフケアが、将来につながる
横山先生:更年期の次のライフステージは老年期です。老年期に出てくる病気は、実は更年期からはじまっています。特に注目すべきは骨粗しょう症。女性の骨はエストロゲンによって守られているので、閉経前から骨密度が低下していきます。
その結果、65歳以上の女性の場合、関節疾患や骨折・転倒など骨粗しょう症を背景とした病態が「要介護」の原因第一位になっています。女性にとって、骨粗しょう症がどれほどQLOを低下させるのか分かりますよね。
老年期のセルフケアも、運動や食事が大切なことに変わりはありません。更年期のセルフケアが将来の病気を防ぎ、老年期のQOLを向上することにもつながります。
杉山さん:更年期が終わったら平和に暮らせると思ったら、その先もあるんですね…。今から、そこにつながるケアをはじめていきたいですね。
藤田さん:将来骨粗しょう症にならないためにも、今筋肉をつけておくことが大事ですね。更年期だけの問題ではないということをモチベーションにして、ジム通いを継続したいと思います。
隅田さん:基本はやはり運動したり食事に気をつけたり、日々の暮らしを健康的に送ることの継続なんだなと改めて思いました。
横山先生:人生100年時代と言われる今、50歳はちょうど折り返し地点。半分も生きれば体にさまざまな変化が起きます。これからの半分のために、今できることについて改めて考える機会にしていただければと思います。体の未来のためにセルフケアを心掛けていただき、困ったときにはいつでも産婦人科医に相談してください。
座談会を終えて
更年期は女性なら誰もが経験するステージ。更年期症状に悩まされたときには、ガマンをするのではなく治療という選択肢があります。また、私たち自身が少し自分の体に気を配ることで、症状を改善できることも分かりました。今ケアをしておくことが将来にもつながります。セルフケアに取り組み、難しいときには医療のサポートを受けながら、更年期を上手に乗り越えていきましょう。
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※このページの情報は2024年9月13日現在のものです。
【仙臺いろは編集部】