仙台のおいしいパン屋さんをじっくりめぐっていく「仙台パン図鑑」。第40回は、前店主から窯と技を受け継ぎ、店名新たに再オープンした薪窯パンの店「麦小屋」へ。安心して口にできる素材をつかい、天然酵母と薪窯のご機嫌を伺いながら丁寧に焼き上げるハード系のパンは、素朴で力強い味わいです。
薪の香りを纏うパンがずらり。
一度に40個ほどのパンが焼ける大きな窯に薪をくべて温度を上げ、均一に焼けるようにパンを移動させながらの焼き作業は、とにかく重労働。窯焼きの技術に長けた職人と言えども、カンをつかむのはなかなか難しかったと言います。気温や湿度に敏感な天然酵母、温度調整が難しい薪窯。いろいろなものに気を配りながらのパンづくりは時間も手間もかかりますが、どれも『麦小屋』のパンには欠かせないものばかり。ふわふわのパンも菓子パンもありませんが、お店に並ぶ約20種のハード系パンはどれも素朴で力強く、変化に富んだ風味が鮮やかで、薪の香りが芳しい。噛みしめるほどに粉の旨みが豊かに広がり、そのおいしさは格別です。
「麦小屋 」おすすめパンカタログ
酸味が強くクセのあるパンが好きな人は「ライ麦全粒粉100%」(ホール・1,080円、1/2・540円、1/4・270円)をぜひ。レンガのように深い焼き色のパンは見るからにかたそうですが、中はまるでパウンドケーキのように密度が高く、驚くほどしっとりとしています。薄くスライスしてチーズと一緒にいただくと、しみじみ、おいしい。
「赤ちゃんパン」として販売されていたパンも、「ミニ食パン プレーン」(ホール・627円、1/2・314円)と名前を変えて並んでいます。『麦小屋』のパンは小麦やライ麦、酵母、塩、水のシンプルな材料で構成されていますが、こちらは菜種油を加えることで、少しやわらかめにして、塩分も控えめに。
最後は『麦小屋』になってから登場したニューカマー「いちじくとゴルゴンゾーラ」(580円)をご紹介。ハード系のパンらしく、クラストはカリッとかため、それでいてクラムは水分をしっかり含んでしっとりもっちり。そんなカンパーニュ生地にゴルゴンゾーラといちじくを合わせた一品は、そのまま食事パンとしてはもちろん、やっぱりワインに合わせたくなるお味です。
仙台市中心部から車で30分ほど。再オープン後も、特に週末は遠方からのお客さまも多く訪れる人気店。なかなか頻繁に足を運べない人はあれもこれもと欲しくなってしまいますが、冷凍してもおいしくいただけるのがハード系パンのいいところ。食べきれない分はぜひ冷凍を。今は『麦家』の頃からのパンを焼くので精一杯という店主ですが、今後はピッツァを焼いたり、イートインスペースを設けたりすることも考えているとのこと。『麦小屋』のこれからもお楽しみに。
取材中に登場した、知っているようでうまく説明できないパンの専門用語をざっくり解説します。
●薪窯
薪窯は、よく乾燥した薪をくべることでレンガや石などでつくられた窯の温度を上げ、その放射熱でパンを焼く仕組み。ガスや電気のオーブンのようにスイッチで温度調整ができるわけではないので、コントロールが難しい窯です。一方、パンの水分を逃すことなく内部までしっかり焼くことができるので、焼き上がりは驚くほどしっとり&もっちり!
麦小屋
※このページの情報は2022年5月20日現在のものです。
【ライター 佐々木綾】【カメラマン 小野寺真希】