仙台パン図鑑 vol.54 「杜のかまど」 ~母娘、ふたりでめいっぱいの愛情を注ぐパン屋さん。~

仙台のおいしいパン屋さんをじっくりめぐっていく「仙台パン図鑑」。第54回は、母娘が営む山元町のベーカリー「杜のかまど(もりのかまど)」へ。リンゴ畑に囲まれた小さなお店に並んでいたのは、つくる人の人柄があらわれている、やわらかくやさしい味がするパンでした。

国産小麦と米麹天然酵母のやさしい味わい。

山元町の山沿いを走るアップルラインを南下したところに建つ『杜のかまど』。自宅の一部を改装したパン屋さんは、看板を見逃すと通り過ぎてしまうような意外なところにあります。駐車場に車を停め、緑に囲まれたレンガのアプローチを抜けると、店を営む母娘が笑顔でお出迎え。店内のテーブルには、カゴいっぱいに焼きたてのパンが並んでいます。国産小麦と米麹の天然酵母を使ったパンは、常時20種ほど。低温でじっくりと熟成させてから焼き上げるパンは、どれも小麦の旨みや甘みが感じられる、ふんわりとやさしい味。まるでふたりの人柄そのものです。

母・恵美さんは山元町出身。結婚を機に小笠原諸島・父島に移り住み、娘・麻恵子さんの就職を機に山元町へ戻ってきました。お菓子やパンづくりが趣味だった恵美さんと、製菓専門学校を卒業後洋菓子店やベーカリーで働いていた麻恵子さんが、『杜のかまど』をオープンしたのは2019年のこと。そのおいしさは口コミで広まり、早いときはお昼過ぎに商品が売り切れてしまうこともあるほどの人気店に!山元町産のミニトマトやイチゴを使い「山元ブランド」として認証を受けたパンや、父島から取り寄せたレモンを使ったパン、売り切れ必至の食パンや塩パンなどを求めて、隣県からも多くのお客さんが訪れます。

「杜のかまど」おすすめパンカタログ

一番人気は「塩パン」(210円)。焼き上がった後、冷めるまで鉄板の上に置いておくことで底にたまるバターがカリッと仕上がるのだとか。ほんのり甘みを感じる生地と、バターのカリッと感、全体をキリッと引き締める岩塩の組み合わせがクセになる味わいです。

やわらかくふんわりと焼き上げた生地に、北海道産小豆の粒あんと分厚くスライスしたバターをサンド。食べ応えのある「あんばたー」(240円)です。端から端まであんことバターがみっちり入っているのがうれしいポイント。どこを食べてもあんこの甘みとバターの塩味の組み合わせが楽しめます。

ミニトマトが採れる10月中旬~6月の限定品「山元ミニトマトのピザ」(320円)。山元町の大栄ファームのミニトマト・フルティカの甘みをいかした「山元ブランド」認証商品です。パン生地を使用したピザなので、耳はふんわり。そのままでもおいしくいただけますが、リベイクするとカリッモチッと食感がアップします。

こちらも「山元ブランド」認証商品の「山元いちごのぱん」(280円)。イチゴが出回る12~3月の季節限定商品です。イチゴのコンポートとクリームチーズを菓子パン生地で包み、ふくらんできたところで追いイチゴ。トロ~ッとあふれ出す甘酸っぱいイチゴと、クリーミーなクリームチーズとの組み合わせがたまりません!

今回紹介した季節限定品以外にも、リンゴやブルーベリー、イチジクなど、旬の食材を使ったパンが多い「杜のかまど」。新しい商品を考えるときは、ふたりでアイディアを出し合い、最終的には麻恵子さんの妹のチェックを経てお店に並ぶといいます。パン以外にも、プライスカードのイラストや、紙袋に押されたハンコ、お店のカウンターやテラスなど、いろいろなものが母娘の手づくり品!家族の愛情がたっぷり注がれているパン屋さん。駐車場も広いので遠方の方もぜひ訪れてみてください。

【パン語解説】
取材中に登場した、知っているようでうまく説明できないパンの専門用語をざっくり解説します。

●米麹天然酵母
果物や穀物からおこす天然酵母。材料となるのはレーズンやリンゴなどいろいろありますが、「杜のかまど」では米麹をベースにしています。米麹の天然酵母は、甘酒のようなほんのりと甘い香りが特徴。「杜のかまど」のパンのやさしい味わいの秘密は、こんなところにもあったのです!

杜のかまど

住所/亘理郡山元町高瀬字東石山原46
電話番号/0223-36-7918
営業時間/9:00~パンがなくなり次第終了
定休日/日・月曜
インスタグラムアカウント/@morino_kamado

※このページの情報は2023年9月15日現在のものです。
【ライター 佐々木綾】【カメラマン 小野寺真希】

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佐々木綾

宮城県仙台市出身。仙台市内の出版社勤務を経て、2007年よりフリーランスのライター・エディターとして活動をスタート。雑誌・フリーペーパー・WEBマガジン等の取材・ライティング・編集を担当。

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