仙台のおいしいパン屋さんをじっくりめぐっていく「仙台パン図鑑」。第72回は、南吉成の閑静な住宅街に佇む「パン工房 プティ・シアン」へ。ご夫婦で営む小さなパン工房は、昼前には品薄になってしまうこともあるという人気店!取材中も“いつものパン”を求めて顔なじみのお客さんが次々と訪れていました。

住宅街で見つけた、ホテル仕込みのパン
北環状線から南吉成の住宅街へ入ったバス通り沿い。2009年からここでパンを焼く「プティ・シアン」はすっかり住宅街に馴染み、うっかりするとそこがパン屋だとは気づかず通り過ぎてしまうほど。アプローチを抜けてウッドデッキから店に入ると、店を営む小島さん夫婦がにっこりと笑顔で出迎えてくれます。奥に工房を備えた店内には、ハード系や調理パン、甘い系など35種類ほどのパンがずらり。しかしこの光景が見られるのは、お昼頃までのことがほとんど。午前中は常連さんを中心に次々とお客さんが訪れ、午後早めに店じまいをすることもあるのだとか。

実は店主の小島さんは、仙台の有名ホテルで長年チーフベーカーを務めていた人物。粉はほとんど練らず、じっくりと時間をかけて発酵させて粉のポテンシャルを引き出す製法はホテル時代から変わりません。手間暇かけたパンは、ふっくらと大きくふくらみ香り高い焼き上がり。材料も国産の発酵バターや北海道産の小麦、蔵王地養卵に自家製のレーズン酵母など、厳選した素材を使用しているのだとか。これは売り切れが多いのも納得です!

「プティ・シアン」おすすめパンカタログ
一番人気は1グループ4個までの「クロワッサン」(200円)。手折りで生地を仕込むため空気を含み、パリパリッとした食感にもリズムが生まれます。噛むほどに小麦の風味が広がり、発酵バターの芳醇な香りが鼻を抜けていく贅沢な一品。サイズもふっくらと大きめで、満足度の高いクロワッサンです。

「イギリス食パン」(450円)は土・日曜限定商品。自家製のレーズン酵母をつかい、ゆっくり時間をかけて発酵させているので、小麦の味がしっかりと感じられるのが特徴です。山の部分は噛み応えがあり、中はしっとり。トーストすると表面がカリッとしてさらにおいしくいただけます。ぜひ最初のひと口は何もつけずにどうぞ。

店主いちおしの「オニオンポテト」(260円)。厳選した小麦と自家製レーズン酵母で仕込んだベーグル生地の中に、ジャガイモが丸ごと1個入っています。ホクホクのジャガイモともちもちのベーグル生地がコラボした、食べ応えのある一品。ジャガイモを包み込むマヨネーズソースのタマネギが、いい仕事をしています。

「アップルクリームパイ」(250円)はおやつにぴったりな一品。クロワッサン生地を使っているので、生地の風味が豊か!なかに挟んだリンゴの水煮とカスタードクリームとの相性も抜群です。表面はクロワッサン生地らしくパリッとした食感で、中はしっとり。甘さもほどよく、冷蔵庫で冷やしていただくのもおすすめです。

厳選した材料とホテル仕込みの製法にこだわり、本当においしいパンを追求しながらも、価格はぐっとおさえている「プティ・シアン」。自宅用にはもちろん、手土産に求める人も多いのだとか。この道47年、店をオープンして16年目!常連さんが多く、長く愛されるには理由があるわけです。これからも「プティ・シアン」のおいしいパンを味わい続けられますように。

【パン語解説】
取材中に登場した、知っているようでうまく説明できないパンの専門用語をざっくり解説します。
●発酵バター
発酵バターは、クリームやバターに乳酸菌を加え、乳酸発酵させてつくるバターのこと。非発酵バターに比べて深みのある風味やコク、芳醇な香りが楽しめるのが特徴です。「プティ・シアン」のクロワッサンには、この発酵バターが贅沢に使われています。
パン工房 プティ・シアン

住所/仙台市青葉区南吉成4-15-7
電話番号/022-277-3390
営業時間/8:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日/火・水曜
※このページの情報は2025年2月28日現在のものです。
【ライター 佐々木綾】【カメラマン 小野寺真希】